この記事では、海上保安官採用試験(大学校「初任科」)の課題論文について試験概要と過去の出題テーマを紹介します。
過去のテーマを把握し、効果的な対策を立てることで、課題論文試験の準備を万全にしましょう。
【海上保安官採用試験】課題論文試験の内容
海上保安官採用試験の課題論文は、あなたの考え方や熱意といった人間性を総合的に判断する記述式の試験です。
ただ単に文章を書けば評価されるのではなく、 課題を正しく読み取り、自分の経験や体験を盛り込み説明できるかなど、知識の総合的な応用力が問われます。
試験時間 | 180分 |
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問題数 | 2題 |
文字数 | 1500字程度 |
配点比率 | 2/6 |
満点 | 6点 / 各問 |
基準点 | 3点 / 各問 |
平均点 | 7.604 |
評価基準 | ○ 出題の趣旨を正しく理解し,設問に沿った解答をしているか。 ○ 出題に関連する基礎知識及び問題意識を有しているか。 思考・判断 ○ 広い視野から多角的に考察しているか。 ○ 問題解決のための取組を述べ,適切な判断・結論を下しているか。 ○ 海上保安官として適切な判断・結論を下しているか。 ○ 論理に矛盾や飛躍がなく,論旨が明確になっているか。 構成・文章 ○ 文章に説得力があり,論文として格調を備えているか。 ○ 正しい用字,用語で書かれているか。 上記「評価の観点」に基づき、2名の試験官が問題それぞれについて次のA~Cで評価します。問題ごとの点数は、A(3点)、B(2点)、C(1点)で、試験官それぞれの評価の合計が点数となります。 | 問題の趣旨
【海上保安官採用試験】課題論文の過去問テーマ
海上保安官採用試験の課題論文の過去問をまとめています。
2024(令和6)年度
問題1
政府においては、第5次男女共同参画基本計画等に基づき、育児休業等の取得を推進するとともに、令和2年度から、子供が生まれた全ての国家公務員の男性職員が1か月以上を目途に育児に伴う休暇・休業を取得できることを目指し、取組を進めている。下表のとおり、国家公務員の育児休業取得率は、平成26年度においては、男性は3.1%、女性は98.7%であったところ、令和4年度においては、男性は43.9%、女性は102.2%(注)と着実に増加している。男性職員による育児休業の取得については更に促進の余地があり、啓発ポスター等による推奨などがされているが、このほかに、どのような方法が効果的と考えられるか。職場環境づくりの観点を中心に具体的に述べなさい。
- (注) ある年度の「取得率」は、同年度中に子が生まれた職員(育児休業の対象職員に限る)の数(a)に対する同年度中に新たに育児休業をした職員数(b)の割合(b/a)。(b)には、同年度になって新たに育児休業を取得した職員ではあるものの、その子は同年度より前に生まれた場合のものが含まれるため、取得率が100%を超えることがある。
問題2
8月18日午後5時零分頃、しょう戒中の海上保安庁無人航空機シーガーディアンにより、甲板上に人が横たわったまま漂流中
の漁船が発見され、現場海域を管轄するA海上保安本部に直ちに映像及び発見位置が連絡された。連絡を受けたA海上保安本部は映像から船名を確認し、漁船の所属する漁業協同組合に照会したところ、8月17日午前からB港を乗組員1人で出港したまま戻っていない漁船であることが判明した。A海上保安本部では救助手段として、ヘリコプター、巡視船、巡視艇を使用することが可能である。この場合、右図の位置関係及び以下の条件下においては、あなたならどのように救助を完了させるか、考えた救助方法とその理由について説明せよ。
<条件>
- 発見位置付近の天候は次第に崩れ、波や風が強くなる予報である。
- 発見位置付近の日没予定は午後7時零分頃である。
- 発見位置から一番近いB港までの距離は120kmで、B港のすぐそばにはヘリポート付きの総合病院がある。
- ヘリコプターは機動救難士が搭乗しており、C航空基地で訓練中のため、資機材積み替え及び燃料搭載に30分必要で、救助の際は、船に近づき機動救難士が降下して要救助者を吊り上げるため20分必要である。
- 巡視船はB港を基地としており、現場海域にほど近い海域をしょう戒中のためすぐに対応可能で、救助の際は、搭載艇を降下し接近して横付け後に要救助者を収容させ搭載艇を揚収するため30分必要である。
- 巡視艇はB港を基地としており、基地待機中のため出港準備に10分必要で、救助の際は、船どうしを横付け後に要救助者を移動させるため10分必要である。
- ヘリコプターと巡視船又は巡視艇の間で要救助者を移動させる必要がある場合は、ヘリコプターの救助所要時間と同様の20分が必要である。
- 巡視船と巡視艇との間で要救助者を移動させる必要がある場合は、巡視艇の救助所要時間と同様の10分が必要である。
- 漂流中の漁船はエンジンが停止しており再起動できない。
- 以上のほか各救助手段の能力(速度)を含め、状況をまとめると以下の表のとおり。
2023(令和5)年度
問題1
人の尊厳や人格を傷つけるハラスメントには様々な種類があり、いずれも組織の生産性を下げたり、人材の損失につながったりするおそれがある。 組織内で発生するハラスメントのうち、あなたが特に問題視するハラスメントの種類を一つ挙げ、 その防止対策及びハラスメント事案が生じた際の対応に関し、組織として講ずべき措置と、職員個人がとるべき行動について、具体的に論じなさい。
問題2
船舶を安全かつ効率的に運航するためには、航路標識を活用し、他船の動向及び自船の位置を常に確認しながら安全な進路へ導く必要がある。このため海上保安庁は、航路標識の点検や整備に努めて交通の安全を確保しており、消灯が即事故につながるような灯台などの重要な航路標識では、電源に自然エネルギーを活用したり、停電時も小型発電機や蓄電池などでバックアップする体制をとるなどしている。
ある年の10月1日(日)の夜、A海上保安部付近に集中豪雨があり、所管しているB岬灯台付近で大規模ながけ崩れが発生した。これにより、B岬灯台へと続く道路とB岬灯台に電力を供給していた送電線鉄塔が崩落し、同日21時にB岬灯台への送電が途絶した。関係機関によると、B岬灯台への送電再開まで10日、道路の復旧にはそれ以上の日数がかかる。
B岬灯台には予備電源として小型発電機が設置されており、消灯していないことも確認できたが、小型発電機に燃料の軽油を補給しなければいずれ停止し消灯するため、燃料補給をする必要がある。
なお、燃料補給はA海上保安部交通課の職員6名(表を参照)で官用車1台(定員4名)のみを使用して行い、他からの支援はないものとし、職員の勤務形態に応じた対応をする必要がある。
あなたがC課長であると仮定し、B岬灯台への送電再開を同年10月11日(水)21時としたとき、 それまでの間の小型発電機への燃料補給について、下記条件を踏まえて計画を立て、その具体的内容(何日の何時から何時にかけてどのメンバーで補給作業を行うのか)と理由について詳しく説明しなさい。
<条件>
- 小型発電機の燃料タンク容量は160Lで、10月1日21時時点では140L残っていたが、1日40Lずつ消費する。
- A海上保安部から崩落地点手前までは車で片道1時間かかる。そこからB岬灯台まで山道が通じており、崩落地点手前からB岬灯台まで往路・復路とも徒歩で3時間かかるものとする。
- 小型発電機の燃料タンクへの給油作業にかかる時間は、考慮しなくてよい。
- 山道には照明がなく、舗装もされていない。日の出は6:00、日の入りは17:30であり、B岬灯台内部に仮眠するところはない。
- 燃料補給には軽油20L入りプラスチック製タンク(重量20kg、以下「軽油タンク」という。)を使用する。A海上保安部の燃料倉庫には軽油タンクが8缶保管されている。
- 官用車には軽油タンク8缶全て積載可能であるが、山道では1缶ずつ職員が背負って運ぶ。
- 燃料補給に使用して空になった軽油タンクには、業者が使用翌日の夕方に給油してくれる。
2022(令和4)年度
問題1
問題2
2021(令和3)年度
問題1
政府において,労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改 革を総合的に推進するため,長時間労働の是正,多様で柔軟な働き方の実現,雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等の措置が進められている。
このような状況を踏まえ,あなたが考える,労働者にとって魅力のある職場,就職先として選択される職場となるための対策を具体的に一つ取り上げ,その理由を明らかにするとともに,その対策を実現する際の問題点と,それを解消又は軽減するための方策について述べなさい。
問題2
東京のはるか南方海上を航行中のコンテナ船Xから,海上保安庁に対して「急病人が発生し,早急に救助して医療機関へ搬送したい」旨の救助要請があった。
救助に出動可能な勢力としてヘリコプターH及び大型巡視船Vがある場合,救助に要する時間など様々な事項を考慮した複数の救助方法を比較の上で,あなたが最善と考える救助方法について述べなさい。
なお,コンテナ船X,ヘリコプターH及び大型巡視船Vの状況は,以下のとおりである。
①コンテナ船X
- 航空基地Aから250マイル(最寄りの港までも250マイル)の海上で停船中(海上保安庁からの指示待ち)
- ヘリコプターが直接離着船できるスペースなし
- 速力:25ノット
②ヘリコプターH
- 航空基地Aで待機しており,搭載燃料量から航空基地Aから200マイルまで進出可能(往復の場合,片道100マイルまで進出可能)
- 特殊救難隊R(洋上でヘリコプターから船舶に降下し、要救助者を吊り上げ救助する部隊)が同乗するが、風速15m/秒を超える場合、吊り上げ救助の実施は困難
- 速力:100ノット
③大型巡視船V
- 航空基地Aから150マイル,コンテナ船Xまで100マイルの海上を航行中。航行可能距離に制限なし
- ヘリコプターが直接離着船できるスペースあり。ヘリコプターの燃料搭載可能
- 波高2m又は風速15m/秒を超える場合,ヘリコプターの離着船実施は困難
- 警備救難艇を搭載しており,同艇を降下して他船から要救助者を救助することが可能(波高2m又は風速15m/秒を超える場合でも,救助の実施が可能)
- 速力:20ノット
- 1ノット=1マイル/時(例「速力:25ノット」は,1時間で25マイル航行することを示す)
- 海上模様は,低気圧が接近中であり,波風ともに徐々に激しくなってきている状況
- 上記以外に必要となる想定があれば,適宜設定することも可とする。
【初任科・本科】海上保安大学校の過去問と効果的な活用方法」をご覧ください。
課題論文以外の過去問も必要な場合は、こちらの「【海上保安官採用試験】課題論文対策に関するFAQ
海上保安大学校(初任科)の論文対策でよくある質問(FAQ)を紹介します。
これからの論文対策で必要な情報ばかりなので、ぜひ参考にしてください。
【海上保安官採用試験】課題論文対策まとめ
海上保安官採用試験の課題論文試験は、あなたが思う以上にやるべきことが多い試験です。
過去問を眺めるだけでは、論文を攻略することはできません。過去問を使い答案を作成したら添削を受けることで徐々に上達します。
課題論文で落ちる人ほど、書いたら書きっぱなしってことが多いです。答案を書いて誰にも見せないというのは、問題を解いても答え合わせをしないのと同じなので注意しましょう。
論文が原因で不合格にならにように、早めに(遅くても試験の3ヶ月前を推奨)準備を始めてください。
この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
試験の内容や対策についてさらに詳しい情報が必要な場合は、下記の記事を参考にしてください。
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