警視庁の警察官になりたい人が最初にぶちあたる壁、警視庁警察官採用試験。
試験対策を始めるうえで、難易度(難しいのか簡単なのか)が気になる人は多いです。
そこで今回は、警視庁警察官採用試験の難易度(難しさ)を徹底解説します。
最初に結論を言うと、警視庁警察官採用試験の難易度は高くないです。でも、合格するのは簡単ではありません。
「これから警視庁警察官を目指したい」「受験勉強を始めたばっかり」という高校生や大学生、社会人の方は参考にしてください。
警視庁警察官採用試験の難易度は?
結論から言えば、警視庁警察官採用試験の難易度は高くないです。
しかし、合格するのは簡単ではありません。
これを詳しく解説します。
倍率は高め
警視庁警察官採用試験の倍率は、他の警察官採用試験と比べて高い傾向にあります。
これは警視庁警察官採用試験の試験日が独立しているので、全国から受験者が集まるからです。
しかし、この数値の中には本気で合格を目指して対策する人が少ないことや予定の採用人数よりも多くの合格者を出すことを考えると、倍率が高い=難易度も高いとはなりません。
最新年度の倍率は後述しています。
試験問題は中学から高校1年レベル
対策するのに多くの時間が必要な筆記試験のレベルは、中学校や高校で勉強してきた内容です。
たとえば、次はメイン科目の一つである数的推理の問題。
「平均算」という単元で、小学校高学年で学習する内容です。なんとなく覚えているのではないでしょうか。
時間をかければ解ける問題は多いので、大学入試や各種資格試験に比べると難易度は低いです。
ボーダーラインは6割程度
ボーダーラインがそこまで高くない点も難易度の低さを証明しています。
たとえば、警視庁合格者の報告では、6割前後の点数で最終合格できており、しっかり準備しておけば容易に到達できる水準です。
試験によっては高得点が必要な場合もあるため(裁判所事務官8割、消防庁三類7割など)、比較すると難易度はそこまで高くないと言えます。
全員は合格できない
しかし、警視庁警察官採用試験は競争試験です。つまり、一定数の採用枠に対して、成績上位者から順に合格が決まるため、受験者全員が合格できるわけではありません。
資格試験(英検や漢検など)であれば偏差値の高い人が何人いても基準点を取れれば合格できますが、競争試験では偏差値の高い人たちよりも1点でも多くの点数を取らなければ合格できないのです。
受験者の大半が東大生だったら勝てる気がしないですよね…。
人物重視(面接が重要)
また、最終合格するには、知識や学力だけでなく、警察官としての適性・資質や人間性(コミュニケーション能力)も必要です。
単純に筆記試験の点数を取れば合格できるものではなく、面接・論作文などによる人間性が最重視されるため、努力がそのまま結果に結びつかない難しさがあるんですよね。
これまでの入学試験や資格試験では、知識を詰め込んでいれば合格できたものが、警視庁警察官採用試験では、能力を総合的に評価されるため単に知識を詰め込んでいるだけでは合格できないのです。
何かの試験に偏った対策をするのではなく、どの試験科目もバランスよく対策しましょう。
警視庁警察官採用試験の内容は?
警視庁警察官採用試験は一次試験と二次試験の2段階選考となっています。
一次試験では、教養試験、論作文試験、国語試験の3つの筆記試験が実施されます。
配点は非公表ですが、総合点の高い順に一次の合否が決まります。ただし、いずれかの試験が著しく低い点数だった場合は足切り(=即不合格)となるので、注意してください。
試験内容 | 試験の概要 |
---|---|
教養試験 | 警察官(社会人)として必要な基礎学力(一般知能・知識)に関する筆記試験。(択一式:120分 / 50問) |
論作文試験 | テーマに基づき、自分の考えを論理的に展開し記述する試験。警察官として直面する課題への対応策や社会情勢など、深い思考と表現力が求められます。(1000字 / 80分) |
国語試験 | 警察官(社会人)として必要な国語力(漢字の読み書き)を測る筆記試験(択一式:20分 / 50問) |
二次試験では、面接試験、体力試験、そして適性試験が行われます。
二次試験(最終試験)の合格者は、一次及び二次選考試験の結果を総合的に判定し、決定されます。
面接試験 | 警察官としての対応力や人柄、コミュニケーション能力などに関する面接試験。過去の経験や将来ビジョンについて質問されます。(1人30分程度) |
---|---|
体力試験 | 警察官の職務を行う上で必要な基礎体力に関する検査 |
適性試験 | クレペリン検査等 |
教養試験の内容
警視庁警察官採用試験の教養試験は、基礎学力や一般教養がどれくらい備わっているかを測る筆記試験です。警察官(社会人)として必要な知識・基礎学力を評価する試験なので、幅広い科目を勉強しなければなりません。
出題科目は、思考力・判断力を問う「一般知能科目」と、高校までに習った基礎学力を測る「一般知識科目」から出題されます。
一般知能 | 数的推理 | 方程式や図形の計算など、思考力や計算力を測る科目 |
---|---|---|
判断推理 | 文章や条件から確実に言える肢を探し出す科目。クイズのような問題が多い。 | |
空間把握 | 平面、立体図形に関する科目。空間認識力や図形の理解が問われる。 | |
資料解釈 | グラフや表を読み取り正しい肢を選ぶ科目。正確な計算力や処理能力が問われる。 | |
文章理解 | 300~400字の現代文や英文を読み、趣旨や内容に合致するものを選ぶ科目。読解力や速読力が求められる。 | |
一般知識 | 社会科学 | 中学〜高校で学んだ政治経済や倫理の理解力を測る科目。 |
人文科学 | 中学〜高校で学んだ地理歴史や国語の理解力を測る科目。 | |
自然科学 | 中学〜高校で学んだ理科(物理、化学、生物、地学)の理解力を測る科目。 |
このように、幅広い科目・分野から出題されますが、問題レベルはそんなに高くありません。
どの科目から手をつけるのか、どの分野は捨てていいのかなど、出題傾向(範囲)を理解し、効率よく勉強しましょう。
出題傾向や勉強方法は次の記事で解説しています。
論作文試験の内容
- 一類は論文、三類は作文です。
論作文試験は、自分の考えや主張を論理的に説明する文章形式の試験です。筆記試験では判断できない、論理的思考力や読解力、警察官としての適性などを総合的に評価します。
文字数は制限があり、1000字以内で書かなければなりません。対する試験時間は80分なので、文字数に対する試験時間が極めて短いのが警視庁の特徴です。時間配分には十分に注意しましょう。
テーマは、"自分自身に関することを踏まえ警察官としてどう活かすか"が頻出です。文章の書き方を勉強したうえで、自己分析を深めることが大事。
論作文のテーマ(2023年実施)
一類 | これまで最も苦労した経験 |
---|---|
三類 | 警察官として大切にしたいこと |
- 一類は第1回試験のテーマ
- 三類は第2回試験のテーマ
論作文は添削なしに上達は望めないので、参考書等で書き方やポイントを勉強したら、必ず予備校等の添削を利用するようにしましょう。
過去の出題テーマや傾向は次の記事で解説しています。
一類(大卒)
三類(高卒)
国語試験の内容
警視庁警察官採用試験の国語試験は、日常で使う"漢字の読みと書き"に関する筆記試験です。一類は漢字検定2級、三類は準2級相当の理解度が求められます。
もともと記述式の試験でしたが、2023(令和5)年度から択一式になっています。試験時間がとても短いので、時間配分を意識して解くことが重要です。
国語試験の問題例
国語試験は、教養試験や論文と違いやれば確実に点数が取れる試験です。ぜひ、得点源にしてくださいね。
より詳しい傾向や問題を次の記事で解説しています。
体力検査の内容
体力試験(検査)は、警察官として必要な、基礎的な体力が備わっているかどうかを判断する試験のことです。普段から鍛えていれば難度は低いと思います。
体力検査の項目
- 腕立て伏せ
- バーピーテスト
- 上体起こし
- 反復横跳び
検査項目は簡単ですが、どの項目も正しくやりきることが重要です。正確なフォームで行わないとカウントされないので注意してください。
- 我流でやってもカウントしてもらえなかった。
- 腕立て伏せはかなり低い位置まで下げないとノーカン。
- 監視員によって評価が曖昧なところが気になる。
受験者たちからは、このような感想をいただいています。しっかりルールを把握して対策しましょう。
なお、正しいフォームややり方は文部科学省の資料「新体力テスト実施要項」を参考にしてください。
面接試験の内容
警視庁警察官採用試験の面接は、自己PRや志望動機から警察官(公務員)としての適性や素質、人間性などを評価・判断する人物試験です。
とくに警視庁(警察官)は面接試験が重視されているので、早い時期から面接対策を見据えていきたいところです。
試験では、一般的な質問に加え、公務員としての責任や使命や、警察官の仕事内容の質問が出されます。
実施形式 | 個人面接 |
---|---|
試験時間 | 30分程度 |
面接官 | 3人 |
面接カード | あり(二次試験日に記入) |
質問例 | 自己紹介をしてください。 志望動機を言ってください。 ⇒なぜ警視庁を志望するのですか。 ⇒警視庁のイメージを言ってください。 長所と短所を簡潔に言ってください。 趣味はありますか。 ⇒どのくらいやっていますか。 ⇒なぜ始めたのですか。 語学はどのくらいできますか。 ⇒これから極めたい語学はありますか。 友人はどれくらいいますか。 ⇒友人からどのように思われていると思いますか。 ⇒親友の名前と漢字を教えてください。 警察官になることを誰かに相談しましたか。 ⇒両親はなんと言っていますか。 ⇒友人はなんと言っていますか。 |
頻出の質問に対するある程度の回答を準備した後は、予備校等を利用して面接練習を行い、姿勢や話し方等を最適化していきましょう。
より詳しい傾向や対策方法は下記記事で解説しています。
警視庁警察官採用試験はいつ実施されるの?
警視庁警察官採用試験の日程は、4月と9月、そして翌年1月の合計3回実施されます。
この採用選考に合格すれば、翌年4月(選考時期によっては翌年10月)から警察学校での活動が始まります。
2024年度警視庁警察官採用試験の日程
2024年3月11日(月)〜25日(月)
- 男女共通
2024年4月13日(土)
<男性警察官>
2024年5月11日(土)、18日(土)、19日(日)のうち、指定された日。
<女性警察官>
2024年5月25日(土)
- 申込方法は、インターネット申込みのみ。
- 2025年3月に高校卒業見込みの人は、第2回試験から受験できます。
- 男性警察官の第2次試験日は、受験者ごとに1日を指定します(受験者の都合で変更することはできません)。
- 一次試験の合格発表日は、一次試験終了後おおむね2週間後です。
- 二次試験の合格発表日は、二次試験終了後おおむね70日後です。
より詳しい試験日程は次の記事で解説しています。
警視庁警察官採用試験の倍率は?
警視庁警察官採用試験の倍率は6倍〜8倍で推移しています。
統一試験日を設けて選考を行っている県警とは違い、警視庁の選考試験は単独日で行うため、全国から受験者が集まりやすいです。なので、他県の警察官採用試験の倍率と比べて高くなる傾向にあります。
2023年度警視庁警察官採用試験の実施状況
性別 | 受験者数 | 合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|
男性 | 4,978 | 824 | 6.0 |
女性 | 1,737 | 304 | 5.7 |
- 一類は第1回〜第3回の合計値。
- 三類は第2回〜第3回の合計値。
より詳細な実施状況は下記の記事でまとめています。
警視庁警察官採用試験に関するFAQ
最後に、警視庁警察官採用試験に関するFAQ(よくある質問)をまとめています。
警視庁警察官の過去問はどこで入手できますか?
警視庁警察官採用試験の過去問は、以下の場所で閲覧・コピー(有料)できます。
- 警視庁情報公開センター(警視庁本部庁舎1階)
- 都民情報ルーム(東京都庁第一本庁舎3階)
また、下記記事でも問題・解答を紹介しているので、参考にしてください。
2024年度警視庁警察官採用試験の採用人数は?
2024(令和6)年度警視庁警察官採用試験では、1,300人の採用を予定しています。
区分 | 採用予定人数 |
---|---|
警察官一類(男性) | 630人 |
警察官三類(男性) | 270人 |
警察官一類(女性) | 280人 |
警察官三類(女性) | 120人 |
- 第1回〜第3回の合計値です。
まとめ|警視庁警察官採用試験は難しいのか
難易度だけで考えれば、警視庁警察官採用試験に受かることはそんなに難しくありません。試験問題は中学〜高校レベルですし、ボーダーラインも5〜6倍程度だからです。
しかし、単純に筆記試験の点数を取れば合格できるものではなく、面接・論作文などによる人間性が最重視されるため、努力がそのまま結果に結びつかない難しさがあります。
解説したとおり、警視庁採用の試験内容は幅広いため、適当に勉強を進めるのではなく、傾向ををきちん理解してから効率よく行うことが大切です。
本サイトでは、警視庁警察官採用試験合格に必要な情報を多く配信しています。
ぜひ、参考にして対策を始めてくださいね。