入国警備官採用試験において、面接試験(人物試験)は合否に直接影響する(社会人選考の場合は配点2/7を占める)重要な試験です。
これは、筆記試験対策と同じくらい、早期から戦略的に準備を進める必要があることを意味します。
面接は、あなたの知識や経歴を問うだけの場ではありません。面接官は、対話を通じてあなたの人間性や潜在能力を見抜き、「日本の安全を守る最前線に、仲間として迎え入れられる人材か」を厳しく評価しています。
この記事では、入国警備官採用試験の面接試験の基本情報から評価基準、そして過去に実際に問われた質問と回答のポイントまで、対策に必要な情報を徹底的に解説します。
正しい知識と万全の準備で不安を自信に変え、最終合格を掴み取りましょう。
入国警備官採用試験の面接試験とは?
まず、入国警備官採用試験の面接試験がどのような形式で行われるのか、基本的な情報を正確に把握しておきましょう。
2024年度(令和6年実施)の試験概要は以下のとおりです。
- 試験時間:20分
- 面接官 :3人
- 配点比率:合否のみ(社会人選考は2/7)
注目すべきは、20分という短い時間で合否が決まる(社会人選考の場合配点比率が全体の「2/7」を占める)点です。
これは、筆記試験の「基礎能力試験(多肢選択式)」や「作文試験」と比較しても、非常に高いウエイトであることがわかりますね。
面接官は3名体制で、あなた一人に対して多角的な視点から質問を投げかけ、評価を行います。短い時間で的確に自分をアピールするためには、事前の戦略的な準備が不可欠です。
面接試験の評価基準
面接官は、一体どのような基準であなたを評価しているのでしょうか。実は、国家公務員採用試験の面接には、人事院が公表している明確な評価項目が存在します。
闇雲に対策するのではなく、この「公式の評価基準」を正しく理解することが、合格への最短ルートです。
入国警備官の面接では、主に以下の5つの観点から、あなたの資質やポテンシャルが評価されます。
① 積極性
この項目では、あなたが困難な仕事にも率先して取り組める人物かが見られています。
入国警備官の仕事は、決して受け身では務まりません。予測不能な事態に直面した際、自ら考えて行動できるか、周りを巻き込んで物事を進められるか、といった主体性が評価されます。
- 率先してことに当たろうとするか
- 必要な自己主張ができるか
- 熱意や意欲を持ってものごとに取り組むか

志望動機や自己PRの回答から、あなたの仕事に対する「熱意」や「意欲」が主に評価されますよ。
② 堅実性
ここでは、地道な努力を継続できるか、そして組織の一員として確実に行動できるかが評価されます。
華やかな仕事ばかりではなく、書類作成や地道な調査といった任務も多いのが入国警備官です。最後まで責任感を持って粘り強く業務を遂行できるか、その真面目さや誠実さが見られています。
- ものごとをまじめに考えるか
- ねばり強く努力するか
- 組織の中で確実な行動がとれるか
③ 判断力
この項目では、冷静かつ的確な状況判断ができるかが問われます。
特に、違反者の摘発や違反調査など、法律に基づいて行動する場面では、常に公正で客観的な判断力が求められます。思い込みやその場の感情で動かず、状況を正しく理解し、論理的に物事を考えられるかが評価のポイントです。
- ものごとの判断は的確か
- 注意力・集中力は十分か
- 状況をよく考えて判断するか
④ 表現力
ここでは、質問の意図を正しく理解し、分かりやすく簡潔に回答できるかというコミュニケーション能力が評価されます。
面接官とのやり取りはもちろん、現場では同僚や上司への正確な報告、関係者への分かりやすい説明が不可欠です。話に一貫性があり、相手に誤解を与えないよう、論理的に話せるかが重要になります。
- 質問に対する応答は的確か
- 話している内容に一貫性があるか
- 話し方がわかりやすく簡潔か
⑤ 態度
最後は、面接全体を通じたあなたの立ち居振る舞いです。
真摯な受け答えや、きちんとした身だしなみ、落ち着いた姿勢など、社会人・公務員としての基本的なマナーや信頼感が評価されます。どんな質問に対しても、誠実で真面目な姿勢を最後まで崩さないことが大切です。
- まじめに応答しているか
- 動作はきちんとしているか
- 落ち着いており安定感があるか
【頻出過去問】入国警備官の面接質問と回答のポイント
ここからは、実際に入国警備官の面接で過去に問われた質問を分類し、それぞれの質問に隠された「面接官の意図」と、評価を高める「回答のポイント」を徹底解説します。
単なる模範解答を覚えるのではなく、「なぜこの質問をされるのか?」を理解することが、予期せぬ質問にも対応できる応用力を養う鍵となります。
① 志望動機・職務理解に関する質問
この系統の質問は、あなたの「熱意」と「本気度」を測る、面接の最重要パートです。
なぜ数ある公安職の中で「入国警備官」を選んだのか、その理由をあなた自身の言葉で、具体的に語る必要があります。
■ 代表的な質問
- 「入国警備官を志望する理由は何ですか。」
- 「入国警備官の仕事をどこで知りましたか。また、どんな仕事がしたいですか。」
- (深掘り質問)「その志望動機なら、警察官の方がいいのではないですか。」
面接官は、「国の安全を守りたい」という漠然とした動機ではなく、「なぜ、水際対策の最前線である入国警備官なのか」という核心部分を知りたいと考えています。
職務内容への深い理解と、強い意志があるかを確認しています。
- Point1:あなただけの「原体験」と結びつける
-
ニュースで見た、OB訪問で話を聞いたなど、具体的なきっかけ(原体験)を述べ、そこから何を感じ、なぜ入国警備官という仕事に惹かれたのかを語りましょう。
- Point2:職務内容を具体的に語る
-
「違反調査」「摘発」「収容」「送還」といった入国警備官の具体的な任務に触れ、自分がどの分野でどのように貢献したいのかを明確に示します。
- Point3:「警察官との違い」を明確にする
-
深掘り質問に備え、警察官や他の公安職との職務内容の違いを自分なりに整理し、「だからこそ入国警備官がいい」という明確な理由を準備しておきましょう。
▼模範回答例(質問:なぜ、水際対策の最前線である入国警備官なのか)
② 自己PR・経験に関する質問
この系統の質問では、あなたがどのような人間で、どんな強みを持っているのか、そしてその強みが入国警備官の仕事でどう活かせるのかという「再現性」が問われます。
過去の具体的なエピソードを交えて、あなたの能力と人柄を説得力をもって伝えましょう。
■ 代表的な質問
- 「あなたの長所を教えてください。また、それを仕事にどのように活かしますか。」
- 「部活動やボランティアなど、学生時代に力を入れたことは何ですか。」
- 「海外の方と関わった経験はありますか。」
- 「語学はどのくらい話せますか。」
面接官は、あなたの自己PRが単なる自慢話で終わっていないかを見ています。
あなたの強みや過去の経験が、入国警備官の持つべき資質(粘り強さ、コミュニケーション能力、協調性など)と合致しているか、そして入庁後も同様に活躍してくれる人材かを見極めようとしています。
- Point1:具体的なエピソードで裏付ける
-
「私の長所は〇〇です」と主張するだけでなく、その長所を発揮した具体的なエピソード(部活動、アルバイト、学業など)をセットで語りましょう。「状況→課題→自分の行動→結果」の流れで話すと、説得力が格段に増します。
- Point2:人事院の評価項目を意識する
-
自分の長所が、先ほど解説した5つの評価項目(積極性、堅実性など)のどれに繋がるかを意識して話すと、評価されやすくなります。
- Point3:入国警備官の任務に結びつける
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回答の最後は必ず、「この経験で得た〇〇という強みを、入国警備官の△△という任務で活かしたいです」と、職務への貢献意欲で締めくくりましょう。
▼模範回答例(質問:あなたの長所を教えてください。また、それを仕事にどのように活かしますか。)
③ 覚悟やストレス耐性を問う質問
この系統の質問は、入国警備官という仕事の厳しさを本当に理解しているか、そして強い精神的プレッシャーの中で冷静に行動できるか、あなたの「覚悟」と「ストレス耐性」を試すものです。
時に、少し意地悪に聞こえるような「圧迫質問」をされることもありますが、それはあなたを試すための意図的なもの。冷静かつ誠実に対応することが重要です。
■ 代表的な質問
- 「転勤は全国規模で、頻繁にありますが大丈夫ですか。」
- 「違反者から厳しい言葉を浴びせられることもありますが、精神的に耐えられますか。」
- 「緊張していますか。」
- (深掘り質問)「入国警備官を受験するのは初めてですか。なぜ昨年は受験しなかったのですか。」
面接官は、あなたが職務の厳しい側面(全国転勤、危険性、精神的負荷など)を具体的に理解した上で、それでもなお入国警備官になりたいという強い意志を持っているかを確認しています。
ストレス状況下でのあなたの反応や人柄も同時に評価しています。
- Point1:ためらわずに「はい」と即答する
-
覚悟を問う質問に対して、少しでも迷いや不安な表情を見せるのは禁物です。「はい、問題ありません」「はい、覚悟しております」と、まずは自信を持って、力強く肯定の意思を示しましょう。
- Point2:「覚悟の根拠」を具体的に示す
-
ただ「大丈夫です」と答えるだけでなく、「なぜなら、〇〇だからです」という根拠を簡潔に付け加えましょう。「体力には自信があります」「学生時代の部活動で精神力を鍛えました」「家族とも話し合っており、理解を得ています」など、具体的な根拠が説得力を生みます。
- Point3:どんな時も誠実な態度を崩さない
-
圧迫気味の質問をされても、感情的になったり、不快な表情を見せたりしてはいけません。あくまで「試験の一環」と冷静に受け止め、質問の意図を汲み取り、真摯な姿勢で回答することを最後まで心がけましょう。
▼模範回答例(質問:転勤は全国規模で、頻繁にありますが大丈夫ですか。)
▼このほかにも過去の質問項目を以下の記事でまとめています。あわせて確認してみてください。
入国警備官採用試験の面接対策を5ステップで解説
面接で何が問われるかを理解したら、次はいよいよ実践的な対策です。
ここでは、入国警備官の面接に合格するための具体的な対策方法を、5つのステップに分けて解説します。このステップに沿って準備を進めれば、着実に自信がつき、本番で最高のパフォーマンスを発揮できます。
ステップ1:徹底的な自己分析で「自分の軸」を固める
全ての対策の出発点となるのが「自己分析」です。
あなたがどんな人間で、何を大切にし、どんな強みを持っているのかを、あなた自身の言葉で語れるようにしなくてはなりません。
■ やるべきこと
- 自分史の作成: 小学校から現在まで、印象に残っている出来事(成功体験、失敗体験、頑張ったこと)を時系列で書き出します。
- 「なぜ?」の深掘り: 書き出した各エピソードについて、「なぜそうしたのか?」「何を感じたのか?」「何を学んだのか?」を5回繰り返して深掘りし、自分の価値観や行動原理を明確にします。
この作業を通じて、志望動機や自己PRの「核」となるエピソードを見つけ出しましょう。
▼「自己PR・志望動機はこれでいいんだろうか・・・」と不安な方は以下の記事を確認してみてください!
ステップ2:職務研究で「求められる人物像」を理解する
次に、自己分析で見えた「自分の軸」と、入国警備官という仕事を結びつけるための「職務研究」を行います。
漠然としたイメージではなく、リアルな仕事内容を深く理解することが重要です。
■ やるべきこと
- 公式サイトの熟読: 出入国在留管理庁の採用サイトやパンフレットを隅々まで読み込み、具体的な任務、組織の理念、最近の取り組みなどを把握します。
- 関連ニュースの収集: 不法入国やテロ対策、外国人技能実習制度など、出入国管理行政に関するニュースに関心を持ち、自分なりの意見を持てるようにしておきます。
ステップ3:面接カードを完成させ、回答の「骨子」を固める
ステップ1と2で得た材料をもとに、まずは面接の設計図となる「面接カード」を完璧に仕上げましょう。
この面接カードに記述する内容こそが、あなたの回答の「骨子」そのものになります。
面接官は、このカードに書かれた内容を基に質問を展開してきます。そのため、ここをしっかり作り込むことで、面接本番での受け答えに一貫性が生まれ、自信を持って話せるようになります。
■ やるべきこと
- 面接カードの項目を埋める: 自己分析と職務研究の結果を総動員し、「志望動機」「自己PR」「長所」など、面接カードの各項目を一つひとつ丁寧に埋めていきます。
- 一貫性のチェック: 完成した面接カードを俯瞰し、「志望動機で語る人物像」と「自己PRのエピソード」に矛盾がないかなど、全体として一貫したメッセージになっているかを確認します。
▼入国警備官の面接カードは以下の記事で詳しく解説しています。
ステップ4:模擬面接で「話す力」を鍛える
頭の中で回答がまとまったら、それを実際に声に出して話す練習を繰り返します。
面接はコミュニケーションの場です。相手に伝わる話し方ができなければ意味がありません。
■ やるべきこと
- 声に出して練習: 作成した回答の骨子を見ながら、自分の言葉でスムーズに話せるようになるまで、何度も声に出して練習します。
- 第三者からのフィードバック: 大学のキャリアセンターや予備校、信頼できる友人や家族に面接官役を頼み、客観的なフィードバックをもらいましょう。話し方の癖や分かりにくい点を指摘してもらうことで、大きく改善できます。
- 動画撮影: 自分の模擬面接の様子をスマートフォンなどで撮影し、表情や姿勢、視線などを客観的にチェックするのも非常に効果的です。
ステップ5:最終準備で「万全の状態」を整える
最後のステップは、本番で100%の力を出し切るための最終準備です。
■ やるべきこと
- 身だしなみの準備: 清潔感のある髪型か、スーツにシワや汚れはないか、靴は磨かれているかなど、公務員としてふさわしい身だしなみを確認します。
- 持ち物と会場の確認: 受験票や面接カードなどの必要書類を前日までに準備し、会場までのルートや所要時間も必ず確認しておきましょう。
- 体調管理: 十分な睡眠を取り、万全の体調で当日を迎えられるように調整します。
まとめ|入国警備官採用試験の面接で落ちないために
今回は、入国警備官採用試験の面接対策について、試験の基本情報から評価基準、頻出過去問、そして具体的な対策の進め方まで網羅的に解説しました。
最後に、最終合格を確実にするための重要ポイントを振り返りましょう。
- 面接は合否判定のみ(社会人は配点2/7を占める)最重要試験。筆記試験と同じ熱量で対策する。
- 人事院公表の5つの評価項目(積極性、堅実性など)を常に意識する。
- 過去問対策では「なぜ?」を深掘りし、あなた自身の言葉で語る準備をする。
- 対策は「自己分析→職務研究→面接カード作成→模擬面接」のステップで進める。
面接に「一発逆転の裏技」は存在しません。
この記事で紹介した対策を一つひとつ、地道に積み重ねていくことが合格への唯一の道です。
不安な気持ちは、徹底的な準備だけが自信に変えてくれます。万全の対策で、自信を持って面接に臨み、あなたの熱意を面接官にぶつけてきてください。
▼入国警備官採用試験の内容は以下の記事でまとめています。
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