本記事では、海上保安官採用試験(国家専門職・大卒程度)の難易度と試験内容を徹底解説します。
結論から言うと、海上保安官採用試験の難易度自体は高くありません。しかし、海上保安官になるまでの道のりは、想像以上に簡単ではないのも事実です。
今回は、大学を卒業した後に海上保安官として働きたい方に向けて、「受験マニュアル」を作る気持ちでまとめました。
最後まで読めば、採用試験の概要から合格に向けた具体的な準備まで、しっかり理解できます。
敵を知らずに対策を始めるのは無謀です。
本記事を参考にして、海上保安官採用試験の合格に向けて着実に準備を進めましょう。
海上保安官採用試験(大卒)は難しいのか?
結論から言うと、海上保安官採用試験の難易度は高くありません。
ただし、合格するのは決して簡単ではないです。ここを混同しないように解説していきます。
倍率は低め
海上保安官採用試験の倍率は、他の公務員試験に比べて低い傾向があります。
たとえば、2025(令和7)年度の最終倍率は約3.3倍でした。この倍率には十分な対策をしていない受験者も含まれるため、実際の競争率はさらに低いと考えられます。
地方公務員(県や市)の倍率は10倍を超えることが多いため、数値上は海上保安官採用試験の難易度は低いと言えます。
試験問題は中学〜高校1年レベル
海上保安官採用試験の筆記試験は、中学校から高校1年生程度の内容が中心です。
出題範囲は広いものの、基本的な学力を問う問題が多く、特別な専門知識は必要ありません。
たとえば、主要科目のひとつである「数的推理」では、中学1年生で学習する「速さ」の単元が頻出です。


時間をかければ解ける問題が多いため、大学入試や各種資格試験に比べると難易度は低めです。
しっかりと基礎を固めれば、安定して得点できるようになります。



久しぶりに見る内容でも、「ああ、こんな問題あったな」と思い出せる方が多いでしょう。
合格ラインは5割程度
海上保安官採用試験のボーダーライン(合格ライン)は、他の公務員試験と比べても高くありません。
年度や採用人数によって多少の変動はありますが、例年の目安は 4〜5割程度。しっかりと基礎を固めて臨めば、十分に到達できる水準です。
たとえば、同じ公務員試験でも、裁判所事務官は8割前後、県庁や市役所職員は7割前後が目安です。
これらと比べると、海上保安官採用試験のボーダーはかなり低めであることがわかります。つまり、限られた時間でも、出題傾向に沿って効率的に勉強すれば、合格点に届く可能性は十分にあります。
難関試験というより、正しい方向に努力すれば結果が出やすい試験と言えるでしょう。
全員は合格できない
海上保安官採用試験は「競争試験」です。つまり、限られた採用枠に対して、成績上位者から順に合格が決まります。
英検や漢検のような資格試験では、一定の基準点を超えれば全員が合格できますが、競争試験では違います。
偏差値の高い受験者たちよりも、1点でも多く取らなければ合格できないのです。
人間性・コミュニケーション力が求められる
最終的に合格を勝ち取るためには、知識や学力だけでは不十分です。海上保安官(国家公務員)としての適性や人間性、コミュニケーション能力も欠かせません。
海上保安官採用試験は、単に筆記で高得点を取れば合格できる試験ではありません。
面接や論文を通して「どんな人物か」「職務にふさわしいか」が総合的に評価されます。そのため、努力が必ずしも点数に直結しない難しさがあるのです。
これまでの入学試験や資格試験では、知識を詰め込むだけで合格できましたが、海上保安官採用試験では人間性とバランスの取れた力が求められます。
どの試験科目にも偏らず、総合的に対策していきましょう。
海上保安官採用試験(大卒)の概要
海上保安官採用試験は、海上保安庁管轄の国家公務員(海上保安官)を採用するための選抜試験です。
人事院が実施する「国家公務員採用試験(専門職)」の一つに位置づけられています。
受験資格(年齢制限)
受験するには大きく分けて「年齢・学歴・法律・身体」の4つの条件を満たす必要があります。
- 年齢の条件
-
1996(平成8)年4月2日以降に生まれた方が対象です。
- 学歴の条件
-
大学(短期大学を除く)を卒業した方および2027(令和9)年3月までに大学を卒業する見込みの方が対象です。
- 法律上の条件
-
国家公務員法で定められた「欠格条項」に該当しないことが必須です。
- 身体の条件
-
以下に該当する方は不合格となります。
- 視力(裸眼または矯正)がどちらか一眼でも0.6に満たない方
- 色覚に異常のある方(職務遂行に支障のない程度は問題ない)
- どちらか片耳でも2000、1000,500各ヘルツでの検査結果をもとに算出した聴力レベルデシベルが、40デシベル以上の音の失聴のある方
- 四肢の運動機能に以上のある方
試験日程(選考スケジュール)
採用試験は、申し込みから最終合格まで、約4ヶ月半にわたるスケジュールで進められます。
主なスケジュールは以下の通りです。
| 出願期間 | 2月19日〜3月23日 |
|---|---|
| 一次試験 | 5月24日 |
| 一次試験 合格発表 | 6月24日 |
| 二次試験 | 7月7日〜14日 |
| 二次試験 合格発表 | 8月12日 |
各日程をしっかりカレンダーに書き込み、計画的に準備を進めることが、合格への大切な一歩になります。
試験科目(種目)
試験は筆記だけではありません。面接や体力検査もあり、総合的な資質が問われます。
主な試験科目は以下のとおりです。
一次試験
| 試験科目 | 試験時間 解答題数 | 配点 比率 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 基礎能力試験 | 110分 30問 | 3/6 | 公務員として必要な基礎的な能力(知能及び知識)についての筆記試験 |
| 課題論文試験 | 180分 2題 | 2/6 | 文章による表現力、課題に対する理解力・判断力・思考力などについての筆記試験 |
二次試験
| 試験科目 | 試験時間 解答題数 | 配点 比率 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 人物試験 | ー | 1/6 | 人柄、対人的能力などについての個別添削 |
| 身体検査 | ー | * | 主として胸部疾患、血圧、尿、その他一般内科系検査 |
| 身体測定 | ー | * | 視力、色覚、聴力についての測定 |
| 体力検査 | ー | * | 反復横跳び、上体起こし、鉄棒両手ぶら下りによる身体の筋持久力等についての検査 |
*は合否判定のみ行います。
筆記試験の対策はもちろん大切です。
しかし、面接や体力検査の準備も早めに始めることで、他の受験者と差をつけることができるでしょう。
海上保安官になるための主な採用試験は、学歴に応じて大きく2つに分かれています。
ご自身の経歴に合った試験区分を選びましょう。
| 試験区分 | 海上保安官採用試験 (大学卒業程度) | 海上保安学校学生採用試験 (高校卒業程度) |
|---|---|---|
| 対象学歴 | 大学卒業(または卒業見込み)の者 | 高校卒業(または卒業見込み)の者 |
| 主な役割 | 将来の幹部候補として採用 | 現場のプロフェッショナルとして採用 |
| 試験レベル | 大卒程度の公務員試験レベル | 高卒程度の公務員試験レベル |
| 合格後の研修 | 海上保安大学校(広島県呉市)で2年間の研修 | 海上保安学校(京都府舞鶴市)で1年間の研修 |
| キャリアパス | 研修後、初級幹部として巡視船等に乗り込み、その後は本庁や管区本部、巡視船の船長などを目指す。 | 研修後、巡視船艇などに配属。経験を積み、各分野の専門家(航海、機関、通信など)を目指す。 |
年齢要件を満たしていれば「海上保安学校学生採用試験(高校卒業程度)」を受験可能です。ご自身の学歴と、将来どのようなキャリアを歩みたいかを考えて選択することが重要です。
海上保安官採用試験(大卒)の試験内容
海上保安官採用試験では、筆記試験だけでなく、面接や体力検査など複数の選考が実施されます。
選考は一次試験・二次試験の2段階で行われ、それぞれの合計得点をもとに最終合格者が決定されるのが特徴です。
第1次試験合格者のうち、人物試験においてA~Cの評価であり、かつ、身体検査、身体測定及び体力検査に合格した者について、基礎能力試験、課題論文試験及び人物試験の標準点を合計した得点に基づいて最終合格者を決定します。
2026年度海上保安官採用試験 合格者の決定方法(jinji.go.jp)
合格ラインを突破するには、各科目の特徴を理解し、戦略的に学習を進めることが大切。
第1次試験の内容|筆記(基礎能力・課題論文)
海上保安官採用試験の第1次試験は、海上保安官(公務員)として必要な基礎知識を問う筆記試験がメインです。
- 基礎能力試験
- 課題論文試験
基礎能力試験(多肢選択式)
数的処理や文章理解といった思考力を問う「知能分野」と、社会科学や自然科学などの知識を問う「知識分野」から構成されます。
幅広い範囲から出題されるため、効率的な学習が鍵となります。
出題分野と対策のポイント
| 知能分野(24問) | 文章理解(11問) 現代文の読解が中心です。とにかく毎日1〜2問でも文章を読む習慣をつけましょう。速読力と要旨を正確に掴む力が求められます。 判断・数的処理(16問) 判断推理、数的推理、資料解釈などが出題されます。公務員試験対策の基本となる分野で、解法のパターンを暗記するまで問題集を繰り返し解く「反復練習」が最も効果的です。特に資料解釈は、与えられたグラフや表から素早く数値を読み解く練習が不可欠です。 |
|---|---|
| 知識分野(6問) | 社会・人文・自然に関する時事(5問) 国内外で起こっている近年の時事に関する知識が問われます。日頃からニュースに関心を持っておきましょう。 情報(1問) 2024年度から新設されました。情報リテラシーやプログラミングに関する知識が問われます。 |
まずは市販の公務員試験対策用の「過去問集(スーパー過去問ゼミなど)」を一冊用意し、特に問題数の多い「数的処理」と「文章理解」から始めましょう。
この2分野で安定して得点できることが、1次試験突破の最低条件です。
課題論文試験
与えられた課題に対し、自身の考えを論述する試験です。
知識量だけでなく、論理的思考力、構成力、そして海上保安官としての資質や熱意が評価されます。
過去の出題テーマ例
- 「国民の期待に応えるために海上保安官に求められること」
- 「組織の一員として行動する上で心掛けるべきこと」
- 「これまでの経験を海上保安業務にどう活かしていきたいか」
高得点を狙うポイント
- 構成を練る: いきなり書き始めず、「序論(問題提起)→本論(具体例・自身の考え)→結論(まとめ・抱負)」という構成メモを作ってから書き始めましょう。
- 具体性を持たせる: 自身の経験談(部活動、アルバイト、ボランティアなど)を交え、「なぜそう考えるのか」を具体的に示すと、説得力が増します。
- 海上保安業務と結びつける: 自分の強みや考えが、海上保安官のどの業務(領海警備、海難救助など)でどう活かせるのかを明確に記述できると、高く評価されます。
- 時間を計って書く: 必ず時間を計り、時間内に指定文字数で書き上げる練習を最低5回は行いましょう。
第2次試験の内容|人物(面接・体力)
海上保安官採用試験の第2次試験は、面接が中心で、主に海上保安官(公務員)としての適性や人物像が評価されます。
- 個別添削
- 体力検査
- 身体検査・測定
個別面接
筆記試験を突破した受験者の「人柄」や「ポテンシャル」を評価するのが人物試験(個別面接)です。
事前に提出する面接カード(履歴書)に基づき、15〜20分程度の面接が行われます。
評価されるポイント
- コミュニケーション能力(質問の意図を正しく理解し、的確に答えられるか)
- 協調性・チームワーク(組織の一員として円滑に業務を遂行できるか)
- ストレス耐性(厳しい環境下でも冷静に対応できるか)
- 海上保安官としての熱意・志望動機
よく聞かれる質問例
- 「なぜ警察官や自衛官ではなく、海上保安官なのですか?」
- 「海上保安官の仕事で、大変そうだと感じることは何ですか?」
- 「これまでの人生で最も困難だった経験と、それをどう乗り越えましたか?」
- 「集団行動において、意見が対立した際にどう対応しますか?」
- 「あなたの長所と短所を教えてください。」
自己分析(なぜ海上保安官になりたいのか)と、業務内容の理解(海上保安官が何をしているのか)を徹底的に深めることが全ての基本です。
ハキハキとした受け答えはもちろん、入退室のマナーや清潔感のある身だしなみも評価対象となります。
大学のキャリアセンターや予備校の模擬面接を積極的に活用し、客観的なフィードバックをもらいましょう。
体力検査
海上保安官には、厳しい環境下で任務を遂行するための基礎体力が求められます。
各種目に基準値が設定されており、一つでも基準に満たない場合は不合格となるため、油断は禁物です。
| 種目 | 基準値(男性の例) | おすすめトレーニング法 |
| 反復横跳び | 20秒間に44回以上 | サイドステップやフットワーク練習。俊敏性を高める。 |
|---|---|---|
| 上体起こし | 30秒間に21回以上 | 毎日30秒×3セットなど、時間を決めて腹筋運動を行う。 |
| 腕立て伏せ | 10秒間に13回以上 | 正しいフォームで、まずは10回×3セットから始め、徐々に回数を増やす。 |
| ぶら下がり | 10秒以上 | 鉄棒や懸垂バーにぶら下がる。握力と背筋が鍛えられる。 |
| 50m走 | 8.5秒以内 | 短距離ダッシュの練習。スタートの反応速度を高める。 |
※基準値は変更される可能性があります。必ず最新の募集要項をご確認ください。
筆記試験の勉強で体力が落ちてしまうケースも多いため、学習計画に週2〜3回のトレーニングを組み込み、継続的に体を動かす習慣をつけましょう。
身体検査・身体測定
身体検査・測定も合否を左右する重要な試験です。
特に視力は、基準が厳格に定められています。
- 視力: 裸眼または矯正(メガネ・コンタクト)で、どちらか一眼でも0.6に満たない場合は不合格となります。
- 色覚: 職務遂行に支障のないこと。(色覚異常の程度によっては不合格となる場合があります)
- 聴力: 正常であること。
- その他: 職務遂行に支障のある疾患等がないか、総合的に判断されます。
視力や持病に不安がある方は、事前に眼科医や専門医に相談し、ご自身の状態が基準を満たしているか確認しておくことを強く推奨します。
海上保安官採用試験(大卒)に関するFAQ
海上保安官採用試験に関するFAQ(受験者から頻繁に寄せられる質問とその回答)をまとめています。
過去問はどこで入手できますか?
海上保安官採用試験(大卒)は、人事院のホームページで公開されています。
【アクセス方法】
- 人事院ホームページにアクセス
- 「試験問題例」のセクションを探す
- 海上保安官採用試験の過去問をダウンロード
▼以下の記事でもまとめています!
合格最低点は何割くらいですか?
受験年度や採用人数によって変動しますが、ボーダーラインは4~5割程度です。
しっかり準備しておけば、十分に到達可能な水準です。
【(参考)他の公務員試験と比較】
- 裁判所職員:8割程度
- 県・市職員:7割程度
海上保安官採用試験のボーダーラインは比較的低く、出題傾向に沿って効率よく勉強すれば十分合格可能です。
▼以下の記事でもまとめています!
倍率はどのくらいですか?
概ね3倍台で推移しています。
【直近3年間の倍率】
- 2025年度:3.3倍
- 2024年度:3.0倍
- 2023年度:2.9倍
地方公務員の統一試験と異なり、選考試験は単独日で実施されるため、全国から受験者が集まりやすい傾向があります。
▼より詳細な倍率データは以下の記事で確認してください!
海上保安官採用試験(大卒)に合格するために
海上保安官採用試験は、難易度だけで考えれば決して高くありません。試験問題は中学〜高校レベルですし、ボーダーラインも4~5割程度だからです。
しかし、筆記試験の点数だけで合格できるわけではありません。面接や論文で評価される人間性も重要で、努力がそのまま結果に直結しない難しさがあります。
解説した通り、海上保安官採用試験は出題範囲が幅広いため、適当に勉強するのではなく、傾向をきちんと理解した上で効率よく対策することが大切です。
本サイトでは、海上保安官採用試験の合格に必要な情報を多数配信しています。ぜひ参考にして、早めに対策を始めてください。
