刑務官採用試験をはじめ、公務員試験の筆記試験に苦労している受験者は多いです。
とくに、本記事で解説する基礎能力試験(=教養試験)は、出題科目・出題範囲ともに膨大のため、「なにから」勉強すればいいか悩んでいる人ばかり。
そこで本記事では、刑務官採用試験の基礎能力試験を効率よく勉強できるように、出題傾向や対策方法を具体的に解説します。
基礎能力試験の勉強方法や出題傾向を詳しく知りたい方にとって、合格に向けた準備を万全にすることができるでしょう。
ぜひ最後までお読みいただき、成功への一歩を踏み出してください。
▼その他、刑務官採用試験の内容はこちら!
【刑務官採用】基礎能力試験の内容
基礎能力試験は、いわゆる「教養試験」と呼ばれる科目です。
幅広い知識が問われるため、効率的な対策が求められます。
| 対象区分 | 全区分共通 |
|---|---|
| 試験時間 | 90分 |
| 問題数 | 40問 |
| レベル | 高校卒業程度 |
| 出題形式 | 五肢択一式(マークシート) |
| 配点比率 | 4/7 |
出題内容は、知能分野と知識分野で構成されます。
知能分野
知能分野は、計算力や読解力を測る分野です。
刑務官採用試験では、以下の4科目から出題されます。
| 数的処理 (数的推理) | 数学的な問題解決力を問う問題。方程式、確率、場合の数、速さなどが含まれます。(いわゆる「数学」に近い分野です) |
|---|---|
| 課題処理 (判断推理) | 論理的な思考力を問う問題。条件整理、論理パズル、順序問題などが出題されます。(「なぞなぞ」や「ロジカルシンキング」に近い分野です)。また、図形の認識力を問う問題。立体図形や平面図形の問題が含まれます。(「図形」の問題です) |
| 資料解釈 | データの読み取りや分析力を問う問題。グラフや表を使った問題が出題されます。 |
| 文章理解 | 300~400字の現代文や英文を読み、趣旨や内容に合致するものを選ぶ科目。読解力や速読力が求められる。 |
数学的要素が強いため、苦手とする受験者は多いです。 しかし、出題数が一番多い分野でもあるため、苦手のままでは合格が難しくなります。
また、時間をかければ正解できる問題が多いのも特徴です。 ただし、解くのに時間がかかりがちなため、本番での時間配分が非常に重要になります。
知識分野
知識分野は、高校までの基礎学力を測る分野です。
刑務官採用試験では、以下の4領域から出題されます。
| 社会科学 | 政治、経済、社会・時事、倫理(思想) |
|---|---|
| 人文科学 | 日本史、世界史、地理、国語、英語 |
| 自然科学 | 数学、物理、化学、生物、地学 |
| 情報 | コンピューター、ネットワークの仕組み、データ分析、プログラミング |
一度は勉強したことのある内容ばかりです。しかし、出題範囲が膨大なので、ポイントを絞りつつ要点を整理して覚えることが大切。
高校での選択科目を中心に勉強し、自分の得意な分野を活かす計画を組みましょう。
【刑務官採用】基礎能力試験の出題傾向
ここでは、刑務官採用試験の基礎能力試験について、過去3年間(2023〜2025年)の出題傾向を詳しく解説します。
出題数の推移(過去3年)
まずは、各科目の出題数をまとめた表を確認してみましょう。
| 科目 | 2025 | 2024 | 2023 |
|---|---|---|---|
| 数的処理 (数的推理) | 4 | 4 | 4 |
| 課題処理 (判断推理) | 7 | 7 | 7 |
| 資料解釈 | 2 | 2 | 2 |
| 文章理解 | 7 | 7 | 7 |
| ┗現代文 | (4) | (4) | (4) |
| ┗英文 | (2) | (2) | (2) |
| ┗古文 | (1) | (1) | (1) |
| 社会科学 | 6 | 6 | 6 |
| ┗政治 | (2) | (2) | (2) |
| ┗経済 | (2) | (1) | (2) |
| ┗社会 | (1) | (2) | (1) |
| ┗倫理 | (1) | (1) | (1) |
| 人文科学 | 8 | 8 | 9 |
| ┗日本史 | (1) | (1) | (1) |
| ┗世界史 | (2) | (2) | (2) |
| ┗地理 | (1) | (1) | (2) |
| ┗国語 | (2) | (2) | (2) |
| ┗英語 | (2) | (2) | (2) |
| 自然科学 | 5 | 5 | 5 |
| ┗数学 | (1) | (1) | (1) |
| ┗物理 | (1) | (1) | (1) |
| ┗化学 | (1) | (1) | (1) |
| ┗生物 | (1) | (1) | (1) |
| ┗地学 | (1) | (1) | (1) |
| 情報 | 1 | 1 | – |
出題科目・出題数は安定的
過去3年間の分析から、刑務官採用試験の基礎能力試験は、出題科目・出題数ともにほぼ変化がない安定した形式であることがわかります。
主要科目(知能分野)は、いずれも毎年ほぼ同じ数の問題が出題されており、年度ごとの変動は極めて小さいです。また、知識分野も、各領域から均等に出題されています。
これにより、過去問や出題傾向に沿った対策が非常に有効です。
「毎年出る分野」「出題数が固定されている科目」を把握しておくことで、学習の優先順位が明確になりますよ。
▼科目別の出題範囲一覧を以下の記事で公開しています!ぜひ活用してください。
【刑務官採用】基礎能力試験の対策5ステップ
刑務官採用試験の基礎能力試験の勉強は、次の手順に沿って行いましょう。
STEP1:出題内容を「分野レベル」で把握する
勉強を始める前に、「どの科目の、どの分野が」よく出題されるかを把握しましょう。
全体の出題数がわかっても、その科目の「どこから(どの分野から)」出題されるかを知らないと、非効率な勉強になってしまうからです。
たとえば、人文科学「日本史」の分野別出題傾向を見てみましょう。


「日本史」の教科書は「原始・古代」から始まります。しかし、出題内容をみると、「近・現代」が圧倒的に頻出です。「原始・古代」や「中世」は、過去10年間で一度も出題されていませんね。
つまり「日本史」を勉強する場合、「近・現代」の分野に絞って学習するのが最も効率的だと判断できます。
このように、科目ごとの「出題分野」を特定することから始めましょう。
▼全科目の出題分野を一覧化しています!
STEP2:捨て科目を決める
全科目を完璧にやろうとせず、「捨て科目」を決めましょう。
頻出度の低い科目や分野に時間を使うと、「重点科目」の勉強時間が減ってしまうからです。限られた時間で成果を出すには、科目の整理(=捨てる勇気)が必要です。
戦略的に「捨てる」とは、以下の2パターンです。
- 科目で捨てる例: 1問しか出ない科目(社会、理科など)は深追いしないと決める。
- 分野で捨てる例: STEP1で見た日本史の「原始・古代」など、出ない分野。
科目別の出題数一覧や出題分野一覧を見ながら「何を捨てるか」を明確にしましょう。



ちなみに、基礎能力試験の合格ラインは4割〜5割程度です。満点を狙う必要はないので安心してください。
STEP3:重点科目から勉強する
得点源となる「重点科目」から勉強計画を立てましょう。
出題数の多い主要科目や頻出分野から勉強するのが、最も合理的だからです。
刑務官採用試験の主要科目は、以下のとおりです。
- 課題処理(判断推理):7問
- 数的処理(数的推理):4問
- 文章理解(現代文) :4問
とくに課題処理や数的処理は得点源になるまで数ヶ月は必要な科目です。
苦手意識のある方は、はやめに準備をはじめましょう。
STEP4:過去問から解く
教科書(インプット)からではなく、すぐに「過去問演習(アウトプット)」から始めましょう。
傾向が安定している刑務官採用試験では、過去問が「最強の参考書」になるからです。インプットから入ると、STEP1で分析した「出ない分野」まで勉強してしまい非効率。
- 重要科目や頻出分野の過去問題集を解いてみます。
→(もちろん最初は解けません。) - 解けなかった問題の解説をしっかり読み込み、その解法や知識を「正文化」(=覚えるべき知識としてインプット)します。
- 「解ける」ようになるまで、何度も繰り返します。
最初に過去問で「ゴール(=問われる知識のレベル)」を知ることが重要です。
ゴールを知れば、教科書を読む際も「ここは出るな」「ここは不要だな」と判断でき、インプット作業を最小限にできますよ。
STEP5:模擬試験で総復習する
模擬試験を活用することで、総合的な実力を確認しましょう。
本番と同じ形式で模擬試験を受けることで、試験の流れや時間配分を体験できます。
模擬試験は、実際の試験と同じ条件(時間、形式)で行いましょう。
静かな場所で、試験時間内に問題を解くことで、本番の雰囲気を体感できます。
模擬試験を通じて、どの問題にどれだけの時間をかけるかを練習します。
特に一般知能分野に時間をかけすぎないように注意し、全体のバランスを意識しましょう。
模擬試験の結果を自己採点し、間違えた問題や時間が足りなかった問題を分析します。
「なぜ間違えたのか」、「どの知識があれば正解できたのか」などの原因を把握し、必ず復習することが重要です。



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【刑務官採用】基礎能力試験に関するFAQ
刑務官採用試験の基礎能力試験に関するよくある質問(FAQ)を紹介します。
刑務官採用試験の過去問はどこで入手できますか?
刑務官採用試験の過去問は、人事院のホームページで公開されています。
【アクセス方法】
- 人事院ホームページにアクセス
- 「試験問題例」のセクションを探す
- 刑務官採用試験の過去問をダウンロード
▼以下の記事でもまとめています!
刑務官採用試験の合格最低点は何割くらいですか?
受験年度や採用人数によって変動しますが、刑務官採用試験のボーダーラインは4~5割程度です。
しっかり準備しておけば、十分に到達可能な水準です。
【(参考)他の公務員試験と比較】
- 裁判所職員:8割程度
- 県・市職員:7割程度
刑務官のボーダーラインは比較的低く、出題傾向に沿って効率よく勉強すれば十分合格可能です。
▼過去の合格点は下記の記事で詳しくまとめています。
刑務官採用試験の対策でオススメの参考書・問題集は?
多くの合格者が実際に使用してきた定番のシリーズは以下のとおりです。
- 【過去問分析の決定版】基礎能力試験の攻略マニュアル
-
「どの科目・分野から勉強すればいいんだろう?」のような悩みを即解決できる1冊です。
科目別に出題範囲をまとめたデータを集約した攻略マニュアルです。オンライン相談室で勉強方法や方向性を即時に確認できる点も◎。
- 【過去問演習に】公務員試験 合格の350シリーズ
-
公務員試験の過去問数年分を集約した問題集です。年別ではなく、科目別に編成されているため、勉強しやすい特徴があります。
試験種目は違いますが、問題レベル(内容)は同じなので、普通に使えます!
解説も丁寧なので、正文化しながら読み進め、必要箇所の知識を覚えたら、オープンセサミで肉付けしていくと効率よく勉強できるでしょう。
- 【数的処理が苦手な人に】畑中敦子シリーズ
-
理系科目が苦手な人は取り組む価値のある参考書です。数的推理や判断推理、資料解釈について最もスタンダードな問題からやや応用レベルの問題まで、段階的にマスターできるように構成しております。
数学が不得意な方でも、解法パターンやテクニックを覚えることで、得意分野にすることは十分可能がコンセプト。
初めは解説を読んで解法をマスターし、それから自力で解けるようになるまで、繰り返し、手を動かして問題を解いてみてください!
▶︎畑中敦子シリーズ
- 【網羅的な知識インプットに】オープンセサミシリーズ
-
公務員予備校東京アカデミーが監修している”初心者〜中級者向け“の参考書です。情報量が豊富でこれ1冊を覚えるだけでかなりの点数が取れます。
しかし、無駄な情報もそれなりに含まれているので出題傾向に沿って、必要な部分に絞って使うことがポイントです。
【刑務官採用】基礎能力試験の対策を始めよう!
今回は、刑務官採用試験の基礎能力試験の概要や勉強方法を解説しました。
基礎能力試験は、高校までにきちんと勉強してきた人からすればそれほど難しいわけではありません。
それなのに多くの受験者が悩んでいるのは、試験科目・範囲が膨大だからです。
基礎能力試験を効率よく勉強するには、出題範囲の理解(=過去問分析)がとても重要になります。闇雲に無駄な勉強をするのではなく、過去の出題傾向を軸に勉強しましょう。
この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
▼各科目の出題範囲はこちら!
