本記事では、「高卒で税務職員を目指したい」「受験勉強を始めたばっかり」という人を対象に、税務職員採用試験の難易度を徹底解説します。
結論から言えば、高卒で税務署職員になる難易度は高くありません。しかし、税務署職員になる(=試験に受かる)ことは思っている以上に難しいです。
今回は、高校を卒業したらの税務署で働きたい方に向けて「受験マニュアル」を作る気持ちで書きました。最後まで読めば、採用試験の概要から合格に向けた準備まで行うことができますよ!
敵を知らずして対策を始めてしまうのは、正直無謀です。本記事を参考に税務職員採用試験の合格に向けて着実に準備を進めていきましょう。
税務職員採用試験の難易度は?
結論から言えば、税務職員採用試験の難易度は高くないです。
しかし、合格するのは簡単ではありません。
これを詳しく解説します。
倍率は低め
税務職員採用試験の倍率は、他の公務員試験に比べて低い傾向にあります。
2023年に実施された令和5年度税務職員採用試験の最終倍率は3.0倍でした。この数値の中には、まともに対策していない人も多く含まれているので、実際はもっともっと低いです。
地方公務員(県や市)の倍率は10倍を超えることが多いので、数値だけ見れば"税務職員採用試験の難易度は低い"と言えます。
- 詳細は後述しています。
試験問題は中学から高校1年レベル
対策するのに多くの時間が必要な筆記試験のレベルは、中学校や高校で勉強してきた内容です。
たとえば、次はメイン科目の一つである数的推理の問題。
「速さ」という単元で、中学校1年生で学習する内容です。なんとなく覚えているのではないでしょうか。
時間をかければ解ける問題は多いので、大学入試や各種資格試験に比べると難易度は低いです。
ボーダーラインは6割程度
税務職員採用試験のボーダーラインがそこまで高くない点も難易度の低さを証明しています。
受験年度や採用人数によって変動しますが、ボーダーラインは5割程度です。しっかり準備しておけば容易に到達できる水準です。
同じ公務員試験でも、裁判所事務官は最低8割必要ですし、県庁や市役所も7割程度。比較すると税務職員のボーダーラインは大したことありません。
5割程度の点数であれば、傾向に沿って勉強すれば十分に取れるので、そこまで難度は高くないでしょう。
全員は合格できない
しかし、税務職員採用試験は競争試験です。つまり、一定数の採用枠に対して、成績上位者から順に合格が決まるため、受験者全員が合格できるわけではありません。
資格試験(英検や漢検など)であれば偏差値の高い人が何人いても基準点を取れれば合格できますが、競争試験では偏差値の高い人たちよりも1点でも多くの点数を取らなければ合格できないのです。
受験者の大半が東大生だったら勝てる気がしないですよね…。
人間性・コミュニケーション力が求められる
また、最終合格するには、知識や学力だけでなく、税務職員(公務員)としての適性・資質や人間性(コミュニケーション能力)も必要です。
第1次試験合格者のうち、作文試験及び身体検査に合格し、かつ、人物試験においてA~Cの評価である者について、基礎能力試験,適性試験,及び人物試験の標準点を合計した得点に基づいて最終合格者を決定します。
2024年度税務職員採用試験の合格者の決定方法
単純に筆記試験の点数を取れば合格できるものではなく、面接・作文などによる人間性が重視されるため、努力がそのまま結果に結びつかない難しさがあるんですよね。
これまでの入学試験や資格試験では、知識を詰め込んでいれば合格できたものが、税務職員採用試験では、能力を総合的に評価されるため単に知識を詰め込んでいるだけでは合格できないのです。
何かの試験に偏った対策をするのではなく、どの試験科目もバランスよく対策しましょう。
税務職員採用試験の内容は?
税務職員採用試験は一次試験と二次試験の2段階選考となっています。
一次試験では、基礎能力試験(教養試験)、作文試験、適性試験の3つの筆記試験が実施されます。
一次試験の合格者は、基礎能力試験と適性試験の両種目の合計点の高い順に合否が決まります。ただし、いずれかの試験が著しく低い点数だった場合は足切り(=即不合格)となるので、注意してください。
試験内容 | 試験の概要 |
---|---|
基礎能力試験 | 公務員(社会人)として必要な基礎学力(一般知能・知識)に関する筆記試験。(択一式:90分 / 40問) |
作文試験 | テーマに基づき、自分の考えを論理的に展開し記述する試験。税務職員として直面する課題への対応策や社会情勢など、深い思考と表現力が求められます。(600字 / 50分) |
適性試験 | 思考力・判断力・瞬発力などをを測る筆記試験(択一式:15分 / 120問) |
作文試験は合格者を対象に、二次試験で評価されます!
二次試験では、面接試験、身体検査が行われます。
二次試験(最終試験)の合格者は、一次及び二次選考試験の結果を総合的に判定し、決定されます。
面接試験 | 税務職員としての対応力や人柄、コミュニケーション能力などに関する面接試験。過去の経験や将来ビジョンについて質問されます。(1人20分程度) |
---|---|
身体試験 | 税務職員として職務遂行に必要な身体や健康度を検査します。呼吸器や循環器などの検査項目について、視診・問診・聴打診を実施。 |
基礎能力試験(教養試験)の内容
税務職員採用試験の基礎能力試験(教養試験)は、基礎学力や一般教養がどれくらい備わっているかを測る筆記試験です。税務職員(社会人)として必要な知識・基礎学力を評価する試験なので、幅広い科目を勉強しなければなりません。
出題科目は、思考力・判断力を問う「一般知能科目」と、高校までに習った基礎学力を測る「一般知識科目」から出題されます。
一般知能 | 数的推理 | 方程式や図形の計算など、思考力や計算力を測る科目 |
---|---|---|
判断推理 | 文章や条件から確実に言える肢を探し出す科目。クイズのような問題が多い。 | |
空間把握 | 平面、立体図形に関する科目。空間認識力や図形の理解が問われる。 | |
資料解釈 | グラフや表を読み取り正しい肢を選ぶ科目。正確な計算力や処理能力が問われる。 | |
文章理解 | 300~400字の現代文や英文を読み、趣旨や内容に合致するものを選ぶ科目。読解力や速読力が求められる。 | |
一般知識 | 社会科学 | 中学〜高校で学んだ政治経済や倫理の理解力を測る科目。 |
人文科学 | 中学〜高校で学んだ地理歴史や国語の理解力を測る科目。 | |
自然科学 | 中学〜高校で学んだ数学、理科、情報の理解力を測る科目。 |
このように、幅広い科目・分野から出題されますが、問題レベルはそんなに高くありません。
どの科目から手をつけるのか、どの分野は捨てていいのかなど、出題傾向(範囲)を理解し、効率よく勉強しましょう。
詳しい勉強方法は下記記事で解説しています。
作文試験の内容
税務職員採用試験の作文試験は、自分の考えや主張を論理的に説明する文章形式の試験です。筆記試験では判断できない、論理的思考力や読解力、税務職員としての適性などを総合的に評価します。
文字数制限はありませんが、解答用紙を見ると600字以内で書かなければなりません。対する試験時間は50分なので、文字数に対する試験時間が極めて短いのが税務職員の特徴です。時間配分には十分に注意しましょう。
テーマは、"「自分自身に関すること」や「社会情勢に関すること」"が頻出です。文章の書き方を勉強したうえで、自己分析を深めることが大事。
作文のテーマ(2023年実施)
誰もが生きやすい社会をつくるために必要なことについて、あなたの思うことを述べなさい。
作文は添削なしに上達は望めないので、参考書等で書き方やポイントを勉強したら、必ず予備校等の添削を利用するようにしましょう。
過去のテーマや傾向は下記記事でまとめています。
適性試験の内容
税務職員採用試験の適性試験は、簡単な計算問題や図形の組み合わせなど、短時間でどれだけ多くの問題を解けるか(処理できるか)を測る筆記試験です。
試験時間15分で、120問の問題に解答します。
出題パターンは大きく分けて3つあります。
- 計算(簡単な足し算や引き算、掛け算、割り算を使いながら受験者の計算力を測ります。)
- 分類(条件に従って文字や記号を該当するものに分類していきます。)
- 照合(似たような数字や記号、文字の並びや組み合わせを分析し、正しいものと照合していきます。)
適性試験の問題例
この他にも、図形の組み合わせや複合問題などがでることもあります。問題自体は簡単なものばかりです。ルールを正確に把握して速く解けるように訓練しましょう!
特別な対策は必要ありませんが、何回かは時間を計って問題形式になれることが大事です。
より詳しい傾向や過去問は下記記事で紹介しています。
面接試験の内容
税務職員採用試験の面接試験は、自己PRや志望動機から税務職員(公務員)としての適性や素質、人間性などを評価・判断する人物試験です。
ここ近年の公務員試験では面接試験が重視されているので、早い時期から面接対策を見据えていきたいところ。
試験では、一般的な質問に加え、公務員としての責任や使命や、税務職員の仕事内容の質問が出されます。
実施形式 | 個人面接 |
---|---|
試験時間 | 15分程度 |
面接官 | 3人 |
面接カード | あり(二次試験日に提出) |
質問例 | ・志望動機を言ってください。 ・希望する部署はありますか。 ・税務職員の説明会には参加しましたか。 ・30秒で自己PRしてください。 ・あなた自身を1分間で表現してみてください。 ・どのようなタイプの友人が多いですか。 ・税務職員になることを学校の先生はなんと言っていますか。 ・大学へ進学しようと思いませんでしたか。 ・部活動は何をやっていましたか。 ・新聞は読んでいますか。 ・税金に関する内容で興味のあるニュースはありますか。 ・公務員の不祥事をどう思いますか。 ・緊張していますか。 ・会場までどうやってきましたか。 ・最後に言い残したことはありませんか。 |
頻出の質問に対するある程度の回答を準備した後は、予備校等を利用して面接練習を行い、姿勢や話し方等を最適化していきましょう。
より詳しい傾向や対策方法は下記記事で解説しています。
税務職員採用試験はいつ実施されるの?
税務職員採用試験の試験日は9月に実施されます。
この採用選考に合格すれば、翌年4月から税務大学校での研修が始まります。
2024年度税務職員採用試験の日程
申込受付期間
2024年6月14日(金)〜26日(水)
一次試験日
2024年9月1日(日)
二次試験日
2024年10月9日(水)〜18日(金)
- 申込方法は、インターネット申込みのみ。
- 第2次試験日は、受験者ごとに1日を指定します(受験者の都合で変更することはできません)。
- 一次試験の合格発表日は、一次試験終了後おおむね30日後(2024年10月3日)です。
- 二次試験の合格発表日は、二次試験終了後おおむね20日後(2024年11月12日)です。
より詳しい選考日程や流れは下記記事をご覧ください。
税務職員採用試験の倍率は?
税務職員採用試験の倍率は3倍台で推移しています。
統一試験日を設けて選考を行っている地方公務員とは違い、税務職員の選考試験は単独日で行うため、全国から受験者が集まりやすいです。
2023年度税務職員採用試験の実施状況
地域 | 受験者数 | 合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|
北海道 | 82 | 42 | 2.0 |
東北 | 269 | 90 | 3.0 |
関東 | 1409 | 488 | 2.9 |
東海北陸 | 450 | 136 | 3.3 |
近畿 | 744 | 240 | 3.1 |
中国 | 271 | 85 | 3.2 |
四国 | 177 | 69 | 2.6 |
九州 | 592 | 205 | 2.9 |
沖縄 | 83 | 12 | 6.9 |
合計 | 4077 | 1367 | 3.0 |
過去の推移や詳しい結果は下記記事で解説しています。
税務職員採用試験に関するFAQ
最後に、税務職員採用試験に関するFAQ(よくある質問)をまとめています。
税務職員採用試験の受験資格は?
次の条件を満たすことが必要です。
2024(令和6)年4月1日において高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して3年を経過していない者及び2025(令和7)年3月までに高等学校又は中等教育学校を卒業する見込みの者。
税務職員の過去問はどこで入手できますか?
税務職員採用試験の過去問は、人事院のHPから最新年度の問題と解答をダウンロードできます。
下記の記事でも過去3年分の問題・解答や効果的な活用方法を解説しているので、参考にしてください。
2024年度税務職員採用試験の採用人数は?
2024(令和6)年度税務職員採用試験では、748人の採用を予定しています。
区分・地域 | 採用人数 |
---|---|
北海道 | 30人 |
東北 | 40人 |
関東甲信越 | 300人 |
東海北陸 | 90人 |
近畿 | 125人 |
中国 | 40人 |
四国 | 25人 |
九州 | 90人 |
沖縄 | 8人 |
- 上記は2024年5月7日現在の予定です。
まとめ|税務職員採用試験は難しいのか
難易度だけで考えれば、税務職員採用試験に受かることはそんなに難しくありません。試験問題は中学〜高校レベルですし、ボーダーラインも5〜6倍程度だからです。
しかし、単純に筆記試験の点数を取れば合格できるものではなく、面接・作文などによる人間性も重視されるため、努力がそのまま結果に結びつかない難しさがあります。
解説したとおり、税務職員の試験内容は幅広いため、適当に勉強を進めるのではなく、傾向ををきちん理解してから効率よく行うことが大切です。
本サイトでは、税務職員採用試験の合格に必要な情報を多く配信しています。
ぜひ、参考にして対策を始めてくださいね。
-
【2024年度】税務職員採用試験の試験日はいつ?合格発表までの流れ
この記事では、令和6(2024)年度税務職員採用試験の日程を紹介します。 出願から最終合格発表日までの流れも詳しく解説しているので、税務職員採用試験への合格を目指す際の参考にしてください。 税務職員採用試験の試験日はいつ? 令和6(2024)年度税務... -
【問題・解答】税務職員採用試験の過去問と効果的な使い方
税務職員採用試験の勉強を始めるためには、過去問の活用が非常に重要です。 過去問を解くことで、試験の出題傾向や自身の実力を把握し効率的に学習を進めることができます。 本記事では、税務職員採用試験の基礎能力試験、適性試験の過去問を扱いやすいPDF... -
【高卒】税務職員採用試験の倍率推移【地域別結果一覧】
この記事では、税務職員採用試験(高卒)の倍率や受験者数、合格者数を紹介します。 全体倍率だけでなく、地域別の倍率や一次試験、二次試験の倍率も掲載。 試験倍率は、税務職員採用試験の難易度を測る重要なデータなので、ぜひ参考にしてください。 税務...