本記事では、刑務官採用試験の難易度と試験内容を徹底解説します。
結論から言うと、刑務官採用試験の難易度自体は高くありません。しかし、刑務官になるまでの道のりは、想像以上に簡単ではないのも事実です。
今回は、高校や大学を卒業した後に刑務官として働きたい方に向けて、「受験マニュアル」を作る気持ちでまとめました。
最後まで読めば、採用試験の概要から合格に向けた具体的な準備まで、しっかり理解できます。
敵を知らずに対策を始めるのは無謀です。
本記事を参考にして、刑務官採用試験の合格に向けて着実に準備を進めましょう。
刑務官採用試験とは?概要を確認しよう!
刑務官採用試験は、刑務所、拘置所、少年院などで働く法務省所管の国家公務員(刑務官)を採用するための試験です。
人事院が実施する「国家公務員採用試験(高卒程度)」の一つに位置づけられています。
まずは試験概要を確認しましょう。
受験資格
受験資格は、主に「年齢」と「性別(A=男性、B=女性)」で区分されており、学歴は問われません。
▼刑務A/Bおよび刑務A/B(武道) の区分
原則として29歳未満の方が対象です。
具体的には、1996(平成8)年4月2日から2008(平成20)年4月1日までに生まれた方が対象となります
▼刑務A(社会人)および刑務B(社会人) の区分
原則として40歳未満の方が対象です。
具体的には、1985(昭和60)年4月2日から1996(平成8)年4月1日までに生まれた方が対象となります
試験日程(選考スケジュール)
採用試験は、夏の申し込みから秋の最終合格まで、約4ヶ月半にわたるスケジュールで進められます。
主なスケジュールは以下の通りです。
| 申込受付期間 | 2025年7月11日(金) ~ 7月24日(木) |
|---|---|
| 第1次試験日 | 2025年9月21日(日) |
| 第1次試験 合格者発表日 | 2025年10月15日(水) |
| 第2次試験日 | 2025年10月23日(木) ~ 10月29日(水) |
| 最終合格者 発表日 | 2025年11月25日(火) |
各日程をしっかりカレンダーに書き込み、計画的に準備を進めることが、合格への大切な一歩になります。
試験科目(種目)
試験は筆記だけではありません。面接や体力検査もあり、総合的な資質が問われます。
主な試験科目は以下のとおりです。
▼第1次選考
| 試験科目 | 内容 | 配点 |
|---|---|---|
| 基礎能力 | 知能分野・知識分野の多肢選択式 | 4/7 |
| 作文試験 | 文章による表現力や課題理解力 | 1/7 |
| 実技試験 | 柔道または剣道の実技(武道区分のみ) | – |
▼第2次選考
| 試験科目 | 内容 | 配点 |
|---|---|---|
| 人物試験 | 個人面接、人柄や対人能力の評価 | 2/7 |
| 身体検査 | 一般内科系検査や視力測定 | – |
| 体力検査 | 立ち幅跳び、反復横跳び、上体起こし(武道区分は除く) | – |
筆記試験の対策はもちろん大切です。
しかし、面接や体力検査の準備も早めに始めることで、他の受験者と差をつけることができるでしょう。
【難易度】刑務官採用試験は難しいのか?
結論から言うと、刑務官採用試験自体の難易度は高くありません。
ただし、合格するのは決して簡単ではありません。
倍率は低め
刑務官採用試験の倍率は、他の公務員試験に比べて低い傾向があります。
たとえば、2024年度の最終倍率は約2.5倍でした。この倍率には十分な対策をしていない受験者も含まれるため、実際の競争率はさらに低いと考えられます。
地方公務員(県や市)の倍率は10倍を超えることが多いため、数値上は刑務官採用試験の難易度は比較的低いと言えます。
試験問題は中学〜高校1年レベル
刑務官採用試験の筆記試験は、中学校から高校1年生程度の内容が中心です。
出題範囲は広いものの、基本的な学力を問う問題が多く、特別な専門知識は必要ありません。
たとえば、主要科目のひとつである「数的推理」では、中学1年生で学習する「速さ」の単元が頻出です。久しぶりに見る内容でも、「ああ、こんな問題あったな」と思い出せる方が多いでしょう。


時間をかければ解ける問題が多いため、大学入試や各種資格試験に比べると難易度は低めです。
しっかりと基礎を固めれば、安定して得点できるようになります。
合格ラインは5割程度
刑務官採用試験のボーダーライン(合格ライン)は、他の公務員試験と比べても高くありません。
年度や採用人数によって多少の変動はありますが、例年の目安は 4〜5割程度。しっかりと基礎を固めて臨めば、十分に到達できる水準です。
たとえば、同じ公務員試験でも、裁判所事務官は8割前後、県庁や市役所職員は7割前後が目安です。
- 刑務官:4〜5割程度
- 裁判所職員:8割程度
- 県・市職員:7割程度
これらと比べると、刑務官採用試験のボーダーはかなり低めであることがわかります。つまり、限られた時間でも、出題傾向に沿って効率的に勉強すれば、合格点に届く可能性は十分にあります。
難関試験というより、正しい方向に努力すれば結果が出やすい試験と言えるでしょう。
全員は合格できない
刑務官採用試験は「競争試験」です。つまり、限られた採用枠に対して、成績上位者から順に合格が決まります。
英検や漢検のような資格試験では、一定の基準点を超えれば全員が合格できますが、競争試験では違います。
偏差値の高い受験者たちよりも、1点でも多く取らなければ合格できないのです。
人間性・コミュニケーション力が求められる
最終的に合格を勝ち取るためには、知識や学力だけでは不十分です。刑務官(国家公務員)としての適性や人間性、コミュニケーション能力も欠かせません。
刑務官採用試験は、単に筆記で高得点を取れば合格できる試験ではありません。
面接や作文を通して「どんな人物か」「職務にふさわしいか」が総合的に評価されます。そのため、努力が必ずしも点数に直結しない難しさがあるのです。
これまでの入学試験や資格試験では、知識を詰め込むだけで合格できましたが、刑務官試験では人間性とバランスの取れた力が求められます。
どの試験科目にも偏らず、総合的に対策していきましょう。
【刑務官採用】第1次試験の内容と対策
刑務官採用試験の第1次試験は、刑務官(公務員)として必要な基礎知識を問う筆記試験がメインです。
合格ラインを突破するには、各科目の特徴を理解し、戦略的に学習を進めることが大切。
基礎能力試験
基礎能力試験は、いわゆる「教養試験」と呼ばれる科目です。
幅広い知識が問われるため、効率的な対策が求められます。
| 対象区分 | 全区分共通 |
|---|---|
| 試験時間 | 90分 |
| 問題数 | 40問 |
| レベル | 高校卒業程度 |
| 出題範囲 | 一般知能 ┗数的推理、判断推理、資料解釈、文章理解 一般知識 ┗社会科学、人文科学、自然科学、情報 |
| 出題形式 | 五肢択一式(マークシート) |
| 配点比率 | 4/7 |
問題の範囲は広いですが、レベルはそれほど高くありません。
どの科目から手をつけるか、どの分野は優先度を下げてよいかを見極め、出題傾向を理解して効率的に勉強しましょう。
▼詳しい傾向分析や効率的な勉強方法は、下記の記事で解説しています。
作文試験
作文試験は、自分の考えや主張を論理的に説明する文章形式の試験です。
筆記試験だけでは判断できない、論理的思考力や読解力、公務員としての適性などを総合的に評価します。
| 対象区分 | 全区分共通 |
|---|---|
| 試験時間 | 50分 |
| 問題数 | 1題 |
| 文字数 | 制限なし(作文用紙の上限は600字) |
| 配点比率 | 1/7 |
作文は「書けるつもりでも、課題に対して十分な解答にならないことがある」試験です。
勉強すれば成果が見える筆記試験とは違い、客観的な評価(添削など)でしか習熟度がわからないため、準備が遅れると不利になります。
毎年、作文で評価が十分に得られず不合格となる受験者が一定数いるため、早めの対策が必須です。
▼具体的な過去のテーマや出題傾向は、下記記事で詳しく解説しています。
【刑務官採用】第2次試験の内容と対策
刑務官採用試験の第2次試験は、面接が中心で、主に刑務官(公務員)としての適性や人物像が評価されます。
人物試験(面接)
人物試験では、自己PRや志望動機などを通じて、刑務官(公務員)としての適性や素質、人間性を評価・判断します。
近年の公務員試験では面接試験の重要性が高まっており、早い段階から面接対策を意識して準備することが大切です。
| 対象区分 | 全区分共通 |
|---|---|
| 実施形式 | 個人面接 |
| 試験時間 | 20分程度 |
| 面接官 | 3人 |
| 配点比率 | 2/7 |
個人面接では、1人の受験者に対して面接官が集中して評価を行うため、様々な観点から人物像がチェックされます。
正しい回答だけを目指すのではなく、自分らしさや刑務官への熱意をしっかりアピールできる準備をしましょう。
▼具体的な過去の質問例や面接対策方法は、下記の記事で詳しく解説しています。
身体検査・測定の内容
刑務官として職務を行うにあたり、健康面に問題がないかを確認するための検査です。
主に以下の項目がチェックされます。
- 呼吸器
- 循環器
- 眼
- 耳鼻咽喉
- 言語
- 聴器
体力検査
体力検査では、刑務官として必要な基礎的な体力が備わっているかを判断します。
実施項目は以下の通りです。
| 項目 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 立ち幅跳び | 205㎝以上 | 147㎝以上 |
| 反復横跳び (30秒間) | 44回以上 | 37回以上 |
| 上体起こし (30秒間) | 21回以上 | 13回以上 |
刑務官採用試験に関するFAQ
刑務官採用試験に関するFAQ(受験者から頻繁に寄せられる質問とその回答)をまとめています。
刑務官採用試験の過去問はどこで入手できますか?
刑務官採用試験の過去問は、人事院のホームページで公開されています。
【アクセス方法】
- 人事院ホームページにアクセス
- 「試験問題例」のセクションを探す
- 刑務官採用試験の過去問をダウンロード
▼以下の記事でもまとめています!
刑務官採用試験の合格最低点は何割くらいですか?
受験年度や採用人数によって変動しますが、刑務官採用試験のボーダーラインは4~5割程度です。
しっかり準備しておけば、十分に到達可能な水準です。
【(参考)他の公務員試験と比較】
- 裁判所職員:8割程度
- 県・市職員:7割程度
刑務官のボーダーラインは比較的低く、出題傾向に沿って効率よく勉強すれば十分合格可能です。
▼過去の合格点は下記の記事で詳しくまとめています。
刑務官採用試験の倍率はどのくらいですか?
刑務官採用試験の倍率は概ね2~3倍台で推移しています。
【直近3年間の倍率】
- 2024年度:2.5倍
- 2023年度:2.0倍
- 2022年度:2.3倍
地方公務員の統一試験と異なり、刑務官の選考試験は単独日で実施されるため、全国から受験者が集まりやすい傾向があります。
▼より詳細な倍率データは以下の記事で確認してください!
まとめ|刑務官採用試験に合格するために
刑務官採用試験は、難易度だけで考えれば決して高くありません。試験問題は中学〜高校レベルですし、ボーダーラインも4~5割程度だからです。
しかし、筆記試験の点数だけで合格できるわけではありません。面接や作文で評価される人間性も重要で、努力がそのまま結果に直結しない難しさがあります。
解説した通り、刑務官採用試験は出題範囲が幅広いため、適当に勉強するのではなく、傾向をきちんと理解した上で効率よく対策することが大切です。
本サイトでは、刑務官採用試験の合格に必要な情報を多数配信しています。ぜひ参考にして、早めに対策を始めてください。
▼過去10年分の出題データを掲載!筆記対策はこれから始めよう!

