海上保安官になるには海上保安学校に入ることが絶対条件です。
そして、この海上保安学校に入るには、人事院が行う採用試験に合格しなければなりません。
本記事では、「海上保安官を目指したい」「海上保安学校の受験勉強を始めたばっかり」という高校生や大学生、社会人の方を対象に、海上保安学校学生採用試験の難易度と入試内容を徹底解説します。
今回は、海上保安学校に合格し、海上保安官として働きたい方に向けて「受験マニュアル」を作る気持ちで書きました。最後まで読めば、採用試験の概要から合格に向けた準備まで行うことができますよ!
敵を知らずして対策を始めてしまうのは、正直無謀です。本記事を参考に海上保安学校の合格に向けて着実に準備を進めていきましょう。
海上保安学校の入試難易度
結論から言えば、海上保安学校学生採用試験の難易度は高くないです。
しかし、合格するのは簡単ではありません。
これを詳しく解説します。
倍率は低め
海上保安学校の倍率は、他の公務員試験に比べて低い傾向にあります。
2023年に実施された令和5年度海上保安学校の最終倍率は2.5倍でした。この数値の中には、まともに対策していない人も多く含まれているので、実際はもっともっと低いです。
地方公務員(県や市)の倍率は10倍を超えることが多いので、数値だけ見れば”海上保安学校の難易度は低い”と言えます。
入試問題は中学~高校1年レベル
対策するのに多くの時間が必要な筆記試験のレベルは高校卒業程度。つまり、中学校や高校で勉強してきた内容です。
たとえば、次はメイン科目の一つである数的推理の問題。
「速さ」という単元で、中学校1年生で学習する内容です。なんとなく覚えているのではないでしょうか。
時間をかければ解ける問題は多いので、大学入試や各種資格試験に比べると難易度は低いです。
ボーダーラインは4割程度
海上保安学校のボーダーラインがそこまで高くない点も難易度の低さを証明しています。
受験年度や採用人数によって変動しますが、ここ最近のボーダーラインは3〜4割程度です。しっかり準備しておけば容易に到達できる水準です。
同じ公務員試験でも、裁判所事務官は最低8割必要ですし、警視庁や東京消防庁でも6割程度いります。比較すると海上保安学校のボーダーラインは大したことありません。
この程度の点数であれば、傾向に沿って勉強すれば十分に取れるので、そこまで難度は高くないでしょう。
全員は合格できない
しかし、海上保安学校は競争試験です。
つまり、一定数の採用枠に対して、成績上位者から順に合格が決まるため、受験者全員が合格できるわけではありません。
資格試験(英検や漢検など)であれば偏差値の高い人が何人いても基準点を取れれば合格できますが、競争試験では偏差値の高い人たちよりも1点でも多くの点数を取らなければ合格できないのです。
受験者の大半が東大生だったら勝てる気がしないですよね…。
人間性・コミュニケーション力が必要
また、最終合格するには、知識や学力だけでなく、公務員としての適性・資質や人間性(コミュニケーション能力)も必要です。
つまり、単純な学力だけでなく、多角的な能力が求められることになります。
これまでの入学試験や資格試験では、知識を詰め込んでいれば合格できたものが、海上保安学校では、能力を総合的に評価されるため単に知識を詰め込んでいるだけでは合格できないのです。
何かの試験に偏った対策をするのではなく、どの試験科目もバランスよく対策しましょう。
海上保安学校の入試内容
海上保安学校の入試内容は一次試験と二次試験の2段階選考となっています。
一次試験
一次試験では、基礎能力試験(教養試験)、作文試験、学科試験の3つの筆記試験が実施されます。
試験内容 | 試験の概要 |
---|---|
基礎能力試験 | 海上保安官(社会人)として必要な基礎学力(一般知能・知識)に関する筆記試験。(択一式:90分 / 40問) |
作文試験 | 与えられたテーマに基づき、自分の思いや考えを自由な形で表現する試験です。海上保安官として直面する様々な課題や、社会情勢に対する自分なりの見解や対策を述べることが求められます。(600字 / 50分) |
学科試験 | 海上保安官(社会人)として必要な学力(数学、英語、物理)を測る筆記試験(択一式:120分 / 26問) |
基礎能力試験(教養試験)
計算力や読解力を測る『一般知能』と、今までに勉強してきた基礎学力を測る『一般知識』で構成される筆記試験です。
試験時間 | 90分 |
---|---|
問題数 | 40問 |
レベル | 高校卒業程度 |
解答方法 | 択一式(マークシート) |
配点比率 | 3/4 |
幅広い科目・分野から出題されますが、問題レベルはそんなに高くありません。
どの科目から手をつけるのか、どの分野は捨てていいのかなど、出題傾向(範囲)を理解し効率よく勉強しましょう。
基礎能力試験の出題傾向や勉強方法は下記の記事で解説しています。参考にしてくださいね!
作文試験
自分の考えや主張を論理的に説明する文章形式の試験です。
筆記試験では判断できない、論理的思考力や読解力、公務員としての適性などを総合的に評価します。
対象区分 | 特別、一般課程 |
---|---|
試験時間 | 50分 |
問題数 | 1題 |
文字数 | 600字 |
評価基準 | ・内容 ・表現 ・文字 |
配点比率 | 合否判定のみ(二次試験) |
作文は、自分では文章が書けると思っていても、意外に書けなかったり、書けた(気になった)としても課題に対してまったく十分な解答にはならないことはよくあります。
勉強すればしただけ成果が見える筆記試験とは違い、客観的な評価(添削してもらうこと)でしか習熟度がわからないため厄介な試験といえるでしょう。
毎年、作文で評価がもらえずに不合格となる受験者は一定数いるので早めに準備をしてください。
作文試験の過去問や対策方法は下記の記事で詳しくまとめています。
学科試験
海上保安学校の学科試験は、数学や英語、物理の基礎学力を測る筆記試験です。
対象区分 | 航空課程、管制課程、海洋科学課程 |
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試験時間 | 120分(*1) |
問題数 | 26問(*2) |
解答方法 | 択一式(マークシート) |
試験科目(*3) | <数学> 数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A、数学B(数列、ベクトルの分野) <英語> コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ <物理> 物理基礎、物理 |
- *1 海洋科学課程は180分。
- *2 海洋科学課程は39問。
- *3 数学と英語は全区分必須解答、物理は海洋科学課程のみ。
試験問題は大学入試レベルの内容なので、それなりの対策が必要です。
学科試験の過去問はこちら!
高校の授業がそのまま役立つので、先生に聞くなどして対策しましょう。
なお、高校を卒業してしまった人はスタディサプリという、大学受験の基礎講座を受けられるアプリがおすすめです。このスタディサプリは「オンラインで、安く、そしてコスパよく」知識をインプットできるWeb講座です。14日間は無料で体験できるので、暇なときに利用してみてくださいね。
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二次試験
二次試験では、面接試験、体力試験、身体検査が行われます。
二次試験(最終試験)の合格者は、一次及び二次選考試験の結果を総合的に判定し、決定されます。
面接試験 | 海上保安官としての対応力や人柄、コミュニケーション能力などに関する面接試験。過去の経験や将来ビジョンについて質問されます。(1人20分程度) |
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体力試験 | 海上保安官の職務を行う上で必要な基礎体力に関する検査 |
身体試験 | 胸部疾患や血圧、身長体重等に関する検査 |
面接試験
志望動機や自己アピールなどを問うことで、あなたが海上保安官として相応しいかどうかを評価・判断する面接試験です。
試験時間 | 20分程度 |
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面接官 | 3人 |
形式 | 個人面接 |
質問例 | →なぜ船舶コースを志望したのですか。 高校を卒業してから何をしていますか。 →大学へ進学しなかった理由は何ですか。 希望管区は決まっていますか。 →その理由はなぜですか。 →希望する管区に行けない場合はどうしますか。 今までの人生で一番印象に残っている経験はなんですか。 高校生活で一番の思い出は何ですか。 →そのときの出来事から何を学びましたか。 趣味はありますか。 →いつからやっていますか。 今後勉強してみたいことはありますか。 →なぜ英語を勉強したいと思ったのですか。 →英語を活かしてどんな仕事をしたいですか。 採用されたら希望する管区はありますか。 →第二希望、第三希望はどこですか。 | 志望動機を教えてください。
個人面接は1人の受験者に対して、集中してチェックできるため、面接官は様々な観点から評価することができます。
間違いのない回答を目指すことも重要ですが、あまりマニュアルに頼るのではなく、それ以上に自分らしさや海上保安官への熱意をアピールできるように準備していきましょう。
面接の質問項目や対策方法は下記の記事で詳しくまとめています。
体力試験
体力試験は、海上保安官として必要な、基礎的な体力が備わっているかどうかを判断する試験のことです。
検査項目 | 内容 |
---|---|
上体起こし | ひざを曲げ、あおむきに寝た姿勢で、30秒間のうちに何回上体を起こすことができるかを検査します。 |
反復横跳び | 100cm間隔に引かれた3本のライン上で、20秒間のうちに何回サイドステップすることができるかを検査します。 |
鉄棒ぶら下がり | 水平に設置された直径2.8cmの鉄棒を両手でにぎり、両足を床から離してぶら下がれるか検査します。 |
体力試験の基準(回数)
種目 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
上体起こし | 21回以上 | 13回以上 |
反復横跳び | 44回以上 | 37回以上 |
鉄棒 | 10秒以上 | 10秒以上 |
これらを行い、それぞれ基準を満たすかどうかを検査します。普段から鍛えていれば難度は低いと思います。
なお、体力試験の注意点としては、どの種目も正しくやることが重要です。
正確なフォームで行わないとカウントされないので注意してください。
- 我流でやってもカウントしてもらえなかった。
- 腕立て伏せはかなり低い位置まで下げないとノーカン。
- 監視員によって評価が曖昧なところが気になる。
受験者たちからは、このような感想をいただいています。
しっかりルールを把握して対策しましょう。
基準に達しないものが一つでもある場合は、不合格となります。得意種目を伸ばすだけでなく、苦手種目を減らせるように頑張ってみてください。
新体力テスト実施要項」を参考にしてください。
正しいフォームややり方は文部科学省の資料「海上保安学校の入試に関するFAQ
海上保安学校の入試に関するFAQ(受験者から頻繁に寄せられる質問とその回答)をまとめています。
試験概要
試験日程
試験対策
まとめ|海上保安学校は難しいのか
難易度だけで考えれば、海上保安学校に受かることはそんなに難しくありません。試験問題は中学〜高校レベルですし、ボーダーラインも3〜4倍程度だからです。
しかし、単純に筆記試験の点数を取れば合格できるものではなく、面接・作文などによる人間性も重視されるため、努力がそのまま結果に結びつかない難しさがあります。
解説したとおり、海上保安学校の試験内容は幅広いため、適当に勉強を進めるのではなく、傾向ををきちん理解してから効率よく行うことが大切です。
本サイトでは、海上保安学校の合格に必要な情報を多く配信しています。
ぜひ、参考にして対策を始めてくださいね。
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